第704回

住宅ローン返済中なのに転勤!やるべきことは何?

来年1月から転勤することが決まりました。現在住んでいるマイホームは5年前に取得して現在住宅ローンを返済しているところです。 中学2年生と1年生の子供が2人いるため、年始早々にとりあえず1人で引っ越しをするつもりですが、来年春に家族を呼び寄せて新しい勤務地で一緒に過ごすか、それとも単身赴任にするかを検討中です。 このように、住宅ローンの返済中に引っ越しをしなければならない場合はどうすればよいのでしょうか。(東京 会社員 男性 45歳)
住宅ローンは一般的に、対象となっている住宅に本人または家族が居住することが条件となっています。 ただ、転勤や親の介護などの事情で引っ越しをせざるを得ない状況になることもあるでしょう。 そのような時は、まず、住宅ローンを借りている金融機関に相談しましょう。 なお、家族全員が引っ越しをして誰も居住しなくなる場合には、住宅ローン減税制度の適用を受けられなくなることがありますので注意が必要です。

単身赴任など本人以外の家族が引き続きマイホームに住む場合は?

住宅ローンを借りてマイホームを取得しても、その後やむを得ない事情で引っ越しをしなければならない場合があります。 よくあるケースは住宅ローンの契約者である夫の転勤です。一般的に、住宅ローンは対象の住宅に契約者本人か家族が居住していることが条件です。 そのため、契約者本人だけが単身赴任することになっても、家族が引き続きその住宅に住み続ければ、住宅ローン契約はそのまま継続できる場合が多いです。 ただ、契約者が転勤することはあらかじめ金融機関に連絡しておきましょう。

家族も一緒に引っ越しをする場合は?

単身赴任ではなく、家族全員で引っ越しをすることになるとどうなるのでしょうか。

具体的には、次のようなケースが考えられます。

家族全員が引っ越しをする例
 転勤   単身赴任ではなく、家族全員で引っ越しをしたい
 転職   遠方の会社に就職することになった
 出産    子供が生まれるため、夫婦一緒に里帰りをしたい
 育児   実家の両親と同居して、親にも子供の面倒をみてもらう必要がでてきた
 教育   子供が遠方の学校に通学することになったため、家族全員で学校の近くに引っ越しをする
 介護   親が要介護状態になったため、実家の親と同居して面倒をみることになった

このような事情で住宅ローンの対象になっている自宅が空き家になる場合でも、空き家の期間が一時的であれば、返済中の金融機関に事前に申し出て、金融機関が認めれば住宅ローン契約を継続することができます。

ただ、空き家が長期化する場合は、住宅ローンの残債の一括返済を求められる場合があります。 住宅ローン契約を継続できたとしても、いつ自宅に戻れるかわからず、長期間留守になるかもしれない場合、引っ越し先が実家など家賃のかからない住居であればまだしも、引っ越し先の賃貸住宅の家賃と住宅ローンの返済が重なると家計には大きな負担になります。

そのような場合には、自宅を売却し、売却代金で住宅ローンの残債を一括返済してローン返済の負担を軽減するか、自宅を賃貸物件にして家賃収入を得ることを検討するのが一般的でしょう。

自宅を「売却する」か「賃す」場合は?

自宅の売却を検討する場合には、まず、不動産仲介会社に査定を依頼して売却金額を見積もりましょう。 自宅を購入した会社が中古住宅の売買仲介も行っていれば、その会社に査定を依頼してもいいですし、近隣の信頼できそうな不動産仲介会社に依頼してもいいでしょう。 複数の不動産仲介会社の査定価格を参考にして売却金額の相場や目安を把握しましょう。 売却金額から不動産会社の仲介手数料や抵当権抹消手数料等のコストを差し引いた金額が、住宅ローンの残高よりも多ければ新たな負担なくローンの一括返済ができます。 逆にローン残高よりも少ない場合には、一括返済をするために貯蓄を取り崩す必要があります。

自宅を賃貸物件にして貸す場合も、不動産仲介会社に依頼して家賃相場を把握するとともに、管理費用などのコストも見積もりましょう。 また、このケースでは、同じ金融機関の比較的高金利の賃貸住宅ローンに、住宅ローンから切り換える必要があったり、別の金融機関の賃貸住宅ローンに借り換えをする必要があったりします。 対応は、現在返済中の金融機関によって異なります。 なお、自宅を貸す場合も、家賃収入から管理費等のコストを差し引いた金額が、ローンの返済額と比較してどうなるかを、長期に渡って見積もる必要があります。

いずれにしろ、住宅ローンの返済中に引っ越しをしなければならない事態が生じた場合は、まずは返済中の金融機関に連絡、相談して、自分や家族の将来のライフプランを考えつつ、自宅や住宅ローンをどうするか、具体的な選択肢を見極めて検討しましょう。

住宅ローン減税制度の適用が受けられないケースがある

住宅ローンを使って住宅の取得をした場合、その後10年間、毎年年末の住宅ローン残高の1%相当額を所得税から控除できる「住宅ローン減税制度」の適用を受けことができます。

大きな税制優遇制度ですので、多くの方がこの制度の適用を受けているでしょう。

転勤等で引っ越しをしなければならなくなった場合は、原則としてこの制度の適用を受けられなくなります。

ただ例外的に、単身赴任の場合は、家族が引き続き自宅に居住するため、引き続いて住宅ローン減税制度の適用を受けることができます。 ただし、単身赴任でも海外駐在の場合は適用されないことがあります。

家族全員で引っ越しをした場合は、転居期間中の住宅ローン減税制度の適用は受けることができません。 しかし、その後マイホームに戻ったときに、まだ減税期間が残っていれば、残存期間のみ適用を受けることができます。

たとえば、住宅を取得して最初の5年間この制度の適用を受けた後に家族全員で引っ越し、3年後に戻ってきた場合は、残りの2年間は再度適用を受けることができます。 なお、再適用のためには確定申告が必要です。

この住宅ローン減税制度には細かい要件や提出書類等が定められていますので、引っ越しが決まったら、税務署等で詳細を確認するようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2016年12月05日