第464回

住宅購入のタイミングは、消費税だけでなく、ローン金利やライフスタイルにも配慮して!

近い将来消費税率がアップしたら、マイホームはもともと値段が高いだけに家計に大きな影響があると思います。余計な支出をしないためにも、税率がアップする前になんとか購入しようと考えています。そのほうがいいですよね?(奈良県 34歳)
確かに消費税率のアップは住宅購入時の支出額に大きな影響を及ぼします。しかし、住宅を購入するタイミングは、消費税だけでなく、住宅ローンの金利動向や自分や家族のライフスタイルなどにも配慮して決めたほうがいいでしょう。総合的に考えて決めたほうが、お金の面でも気持ちの面でも、より満足度の高いマイホーム購入になるのではないでしょうか。

消費税アップは住宅購入計画に影響を与える!?

社会保障と税の一体改革案が3月末に閣議決定され、国会に提出されました。この法案には、消費税率を2014年4月から現在の5%から8%へ、さらに2015年10月には10%に引き上げると記載されています。

消費税は、ほとんどすべての商品・サービスの価格に影響を与えます。住宅についていうと、「土地」に消費税はかかりませんが、「建物」や諸経費等にはかかります。たとえば、建物の価格が2,500万円の場合、消費税は現在の5%だと125万円。8%になると75万円増えて200万円。10%になると今より125万円増えて250万円になります(激変緩和措置が設けられない場合)。このように、住宅は高額なだけに消費税がアップすると、それに伴って負担する金額が大きく増えます。

住宅購入と消費税に関するある意識調査によると、「消費税の引き上げが決定した場合に住宅購入計画に影響を受ける」と回答した人の割合は半数以上の58.0%。その人たちに「どのような影響を受けるか」を聞いたところ、約半数の45.6%の人が「できるだけ消費税引き上げ前に購入したい」と答えています。「予算等の購入計画を見直したい」人は35.9%、「購入自体を見送る」と答えた人は16.9%です。

消費税のゆくえが、住宅を購入するタイミングや予算などの意思決定に大きな影響を及ぼしていることがわかります。

住宅ローンの金利上昇は、消費税アップ以上のインパクト!

消費税以上の大きな影響を家計に与えるといってもいいのが住宅ローンの金利です。

現在は歴史的な「低金利状態」が続いていますが、住宅購入のタイミングによっては、その時に金利がアップしていないとも限りません。下表の例でみると、今、金利年1.0%で借りられるローンが、将来年0.5%アップして金利が年1.5%になった場合、返済総額は約250万円のアップになります(下表※1)。また、今後金利が年1.0%アップして年2.0%になった場合には、約514万円も総返済額がアップしてしまいます(下表※2)。

住宅ローンの返済額シミュレーション
【条件】返済期間:35年 元利均等返済方式 ボーナス返済なし
借入額 住宅ローン
金利(年率)
総返済額 借入時に金利が
年0.5%アップした場合
の負担増額分
借入時に金利が
年1.0%アップした場合
の負担増分
2,500万円 1.0% 29,639,998円    
1.5% 32,149,366円 2,509,368円(※1)  
2.0% 34,782,590円 2,633,224円 5,142,592円(※2)
2.5% 37,536,997円 2,754,407円 5,387,631円
3.0% 40,409,269円 2,872,272円 5,626,679円
3.5% 43,395,516円 2,986,247円 5,858,519円

※筆者作成

したがって、消費税率アップの動きだけでなく、住宅ローンの金利動向を見極めたり、自分にピッタリの住宅ローン選びをすることで、より有利な選択をすることができます。

【参考リンク】

イー・ローンを使うと、新築購入・中古購入などの用途、物件所在地、金融機関など、さまざまな切り口で住宅ローン商品を検索し、比較・検討することができます。また、気になるローンを最大5つまで「ローン比較リスト」に登録して、それぞれのローンの具体的な条件やコストを一覧形式で比べることも可能です。

【参考リンク】

ライフスタイルやライフプランに合わせて決める!

消費税以上の大きな影響を家計に与えるといってもいいのが住宅ローンの金利です。

消費税率もアップしておらず、住宅ローンの金利も低い状態が続いている現在の経済環境だけから考えると、今はマイホームの買い時と言えるかもしれません。しかし、これら外部要因による金額の損得だけでマイホームの購入を決めることはオススメできません。

まずは「住まい」に対する家族の価値観を大切にしましょう。年齢や家族構成に応じて賃貸住宅を住み替えていくという考え方もあります。また、マイホームを購入するにしても、老親に対する考え方や、夫婦・子どもたちの年齢、仕事や将来の異動の可能性など、ライフスタイルやライフプランなどによって、購入するのに適当なタイミングは必ずしも今ではないかもしれません。

マイホームの適切な購入時期は、それぞれの人によってマチマチ。「外部要因」だけでなく、「内部要因」にもしっかり目を向けて決めてほしいものです。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2012年04月13日