第1026回

5・6月は大学の授業料納付時期。借り入れするなら比較検討して有利なものを

大学2年になった息子の前期の授業料支払い期限が近づいてきました。学費や仕送りが想定よりかさみ、やりくりが大変になってきたので、借り入れを検討しています。借り入れの際には、どんなことに気を付けるとよいでしょうか。(愛媛県 Sさん)
学費不足を補うなら、基本的には返済不要や学費減免、低金利などの家計負担の少ないものから検討を。さらに、「早く借り入れたい」「在学中の返済は難しい」といった優先したい条件に応じて、借入手段を比較検討しましょう。

家計に重い、年2回の学費の支払い

大学の学費の平均額(年額)は、国立大学で約54万円、私立文系で約96万円、私立理系で約132万円。私立の医歯系学部では、381万円にもなります(⇒表1)。大学の学費支払いは年2回、春(4月末~6月)と秋(10~11月)に、一度に数十万円以上のまとまった金額を支払うことになるため、家計の負担になる場合も多いでしょう。さらに自宅外から大学に通う場合は、毎月の仕送りが必要になる可能性もあり、やりくりはさらに大変になります。

表1 大学の学費の平均額(単位:円)
区分 授業料 施設設備費 合計
国立大学 535,800 - 535,800
私立大学 文科系学部 815,000 148,000 963,000
理科系学部 1,136,000 179,000 1,315,000
医歯系学部 2,883,000 931,000 3,814,000
その他学部 969,000 230,006 1,199,006
全平均 931,000 180,000 1,111,000

国立大学:「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」より
私立大学:文部科学省「2021年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」より

学費不足を補うなら、負担の少ない手段から検討を

学費や仕送りで家計が苦しくなってきたら、まずは、学費の減免制度や給付型の奨学金などが利用できないかを検討しましょう。収入や借入理由、学力基準などの条件が厳しい場合も多いですが、利用できるものがあれば、確実に家計負担は軽くなります。

日本学生支援機構の給付奨学金は、「住民税非課税世帯・準ずる世帯の学生等」を対象とするものです。ただし、給付奨学金の申請時期は春と秋に限られます(生計維持者の死亡・失職などによる家計急変の場合は学校を通じて随時申請可能)。今回の学費支払いには間に合いませんが、学費不足が続きそうなら、条件を早めに確認されておくとよいでしょう。給付型奨学金の対象者は、授業料の免除・減額を受けることもできます。

奨学金制度は大学独自のもの、自治体・企業・財団等のものもあり、在学中の大学の授業料減免制度が利用できる場合もあります。利用条件を満たせるものがないかチェックしてみましょう。日本学生支援機構のホームページでは、大学・地方公共団体等が行う奨学金制度を検索することもできます。

借り入れの前に、条件を洗い出そう

返済の必要な教育ローンや奨学金を利用するなら、なるべく返済負担が軽いもの、低金利のものを選びたいですね。しかし、借入理由や条件によって、選び方が変わる場合もあります。

支払い期日が迫っていれば、「低金利」よりも「素早い借り入れ」が優先されるでしょう。学費負担による赤字が続くのであれば、「在学中は返済なし」「在学中は利息返済のみ」といった返済方法が取れることも選択のポイントになります。逆に、たとえば「上の子が卒業したら、どんどん返済を進めたい」と考えているなら、繰上げ返済のしやすさもポイントになるでしょう。

まずは、いくら足りないのか、いつまでやりくりが大変な状態が続きそうなのかを洗い出し、「金利」「借入条件」「融資実行までの期間」「返済方法」などの求める条件をはっきりさせることが大切です。そのうえで、優先順位を考えて、借入手段を選ぶとよいでしょう。 

奨学金の返済は、貸与終了後から

日本学生支援機構の貸与奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。返済は奨学金の貸与終了後、その翌月から数えて7か月目から始まります。

奨学金の貸与を受けるのは学生であり、返済義務も学生本人にあります。卒業後に希望どおりの働き方や収入が得られるかは不確定です。本人とよく話し合い、借りすぎに注意し慎重に返済計画を立てて利用を検討しましょう。

教育ローンは、金利負担と借り入れ・返済の条件を比較検討して選ぶ

教育ローンには、日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)や、民間金融機関(銀行や信用金庫、信販会社等)の教育ローンがあります。資金使途を問わないフリーローンやカードローンも教育資金目的での利用は可能ですが、一般的には、資金使途を教育資金に限定した教育ローンのほうが低金利です。「在学中は利息のみの返済」といった教育ローンならではの返済方法を選べる商品もあります。

国の教育ローン

日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)は固定金利(2023年5月現在の金利年1.95%)で、子ども1人につき350万円(一定の要件を満たす場合は450万円)まで借り入れが可能です。

返済期間は最長18年で、在学中は元金を据え置いて利息のみの支払いもできます。国の教育ローンを利用するには扶養する子の数に応じた収入の上限がある一方、ひとり親家庭・交通遺児家庭、子ども3人以上の家庭、世帯年収200万円以内の家庭は、金利・保証料の優遇が受けられます。

借り入れの申込みは随時可能ですが、通常、申込完了から審査の結果が出るまで10日前後、融資金が振り込まれるまでは10日前後必要とされています。さらに、入学シーズンは申込みが増えるため、必要時期の2~3カ月前が申込みの目安となります。資金不足の時期が明らかな場合は、早めに申し込んでおくことが大切です。

民間の金融機関の教育ローン

民間金融機関の教育ローンは銀行や信用金庫、信販会社等のさまざまな金融機関が取り扱っています。金融機関や商品によって内容は異なりますが、一般に、所得制限(上限)などはなく、借入可能額が大きく、資金使途は広く(授業料などの学費のほか、下宿代などの仕送りなどにも利用可能)、審査期間が短いことが特徴です。「在学中は利息のみの返済」が可能な商品もあります。

学費の支払いなどが迫っているのであれば、民間教育ローンの審査回答期間が短いものを中心に検討するのもよいでしょう。

また、在学中の大学で、銀行や信用金庫、信販会社等の民間金融機関と提携した教育ローンが用意されていることもあります。資金使途は学資に限られ、融資金は学校指定の口座に直接振り込まれて、下宿費用等の借り入れはできない場合が多いようです。利用を検討される際は、資金使途や金利、融資実行までの期間、返済の利便性など、求める条件を満たしているかどうか、他のローンとも比較検討して有利なこと確認しましょう。

このように、学資不足を補う手段は、奨学金や学費減免、教育ローンなどさまざまなものがあります。不足金額や不足する時期、無理のない返済方法など、家族や家計の状況を確認しながら、求める条件に合う手段を比較検討してみてください。

【参考リンク】

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2023年05月09日