第1039回

子供の教育費の準備には、学資保険が最適??

夏休みに地方の実家に帰省すると、親から「子供が生まれたら、将来の教育費の準備のために学資保険に入った方がいい」と言われました。親は、かつて、私の大学進学に向けて、学資保険で教育資金を準備したようですが、子供の教育費の準備方法は、学資保険が最適なのでしょうか。(東京都 女性 会社員)
かつて、金利が今よりも高かった時代には、学資保険は子供の教育費を準備する代表的な方法のひとつでした。しかし、2000年代に入り、超低金利時代と言われるようになってからは、学資保険で効率的にお金を増やすことは難しくなっています。そのため、現在は、子供の教育資金の準備方法が多様化しています。時間をかけて長期的に準備する場合は、これまで同様、学資保険や積立貯蓄、一般財形貯蓄などがありますが、その他にもNISA制度(少額投資非課税制度)を活用した資産運用もあります。短期的な準備方法としては、奨学金や教育ローンの活用などの方法もあります。

超低金利状態が続いているため、学資保険で効率的にお金を増やすことは困難!

子供の誕生をきっかけに、長期間に渡って準備する教育資金の主な用途は、大学進学にかかる費用です。大学進学にかかる費用は、高校までと違って、短期間に多額の資金が必要です。具体的には、受験関連費用や入学金、在学中の授業料、教科書代などがあります。自宅から通学しない場合には、新生活準備費用や住居費、仕送りなども必要になります。これらの費用のうち、毎年の世帯収入でカバーできない金額を、子供が生まれてから大学に入学するまでの間に蓄えるというのが、教育資金準備の一般的な考え方です。

かつて、金利が高い時代には、教育費を準備する代表的な方法のひとつが学資保険でした。子供の誕生をきっかけに、契約者・受取人を親、被保険者を子供にして毎月保険料を支払い、一定の期間が経過した後に学資金を受け取ります。学資保険は、金利が高い時代は、支払った保険料の総額を大きく上回る学資金を受け取ることができていました。

ところが、2000年代に入って超低金利時代になると、預貯金と同様、学資保険で効率的にお金を増やすことが難しくなってきました。

とはいえ、安全、確実に教育資金を準備したい方にとっては、現在でも学資保険の利用価値はあります。学資保険には、保険期間中に契約者の親が万が一死亡した場合は、以後の保険料の支払いが免除になる保障の機能もついています。また、商品によっては、保険料をまとめて一括払いにするなど、保険料の支払い方法を工夫することで、受け取る学資金の割合を高めることができるものもあります。

積立貯蓄や一般財形貯蓄なども、これまで通り、安全、確実に教育資金を準備する有効な方法です。ただ、超低金利のため、効率的にお金を増やすことは期待できません。

なお、2024年10月分(支給は2025年2月)から、児童手当の支給対象等が変更になります。現在は中学卒業までが支給対象となっていますが、高校卒業まで延長される予定です。また、現在の所得制限は撤廃され、支給対象が全員に拡大されます。支給額は、子供1人につき、3歳未満は月1.5万円、3歳以上高校生までは月1万円、そして、第3子以降は年齢に関わらず月3万円となります。

この児童手当を、教育資金準備の積み立てに活用する方法もあります。

NISA制度を活用し、投資信託への長期の積立投資で準備する方法もある!!

投資信託への積立投資によって教育資金を準備する方法もあります。投資信託は、株式や債券など、値動き(リスク)のある資産を組み入れた金融商品であり、元本は保証されていません。そのため、安全、確実な方法とは言えません。

しかし、長期投資(長期間運用すること)、分散投資(複数の資産を組み合わせて運用すること)、積立投資(定期的に定額で積み立てを行うこと)の3つを組み合わせて実践すれば、収益を確保する確率を高めことができると言われています。預貯金や学資保険よりも、効率的にお金を増やすことが期待できます。

現在、国は、国民の資産形成を後押しするためにNISA制度(少額投資非課税制度)を設けています。この制度は、資産運用による収益に通常かかる約20%の税金を、一定の条件で非課税にするものです。2014年からスタートした制度ですが、2024年以降、抜本的に拡充され、恒久化されることが決まっており、使い勝手が大きく改善します。

このNISA制度を活用して投資信託を定期的に定額で長期間積み立てれば、効率的に資金準備を行うことが期待できます。

短期的な教育資金の準備には、奨学金や教育ローンの活用も・・・

教育資金準備の計画を立てて長期間積み立てを行っても、実際にかかる教育費の金額は、その時になってみないとわかりません。進学先が想定した通りにならず、思った以上にお金が必要になる場合や、収入が変動したり、住宅を取得して住宅ローンの返済が始まるなどして、予定通りに積み立てができない場合もあります。第2子や第3子のための準備が充分にできないこともあるでしょう。

不足する教育費を短期間で準備する方法には、奨学金や教育ローンの活用があります。

奨学金制度には給付型と貸与型があり、給付型は返済の必要がありません。貸与型は、将来子供自身が返済する必要があります。国の奨学金は日本学生支援機構が取り扱っており、企業や民間団体、地方自治体も、独自の奨学金制度を設けています。それぞれ活用できる条件が異なるため、あらかじめ絞り込んでおけば、実際に活用するときに手続きがスムーズに進むでしょう。

教育ローンは、不足する教育資金を親が借り入れて返済する仕組みです。数多くの金融機関が取り扱いをしているため、事前に借入条件等を充分に吟味・検討し、少しでも有利なものを選択するようにしましょう。また、将来家計の運営が厳しくならないように、借り入れる前に返済プランを明確にしておくことも大切です。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2023年08月02日