第1029回

親子で住宅ローンを借りたい!親子リレーローンと親子ペアローンの違いは?

両親との二世帯住宅の購入を検討しています。親子で返済できる住宅ローンがあると聞いたのですが、どのようなものですか?注意点などを教えて下さい。(30代 会社員)
1つの住宅を購入し、親子で住宅ローンを返済していく方法には、「親子リレーローン」と「親子ペアローン」の2種類があります。単独で住宅ローンを組む場合と比べて借入金額を大きくすることができ、親子それぞれが住宅ローン控除を利用できるなどのメリットがありますが、税制面や相続面など注意すべき点もあります。

親子リレーローンとは

親子リレーローンとは、1本の住宅ローンを契約し、親子がリレー形式で返済する方法です。当初は親が返済し、あらかじめ定めた親の返済期間が終了すると、子が返済を引き継ぎます。審査は親子で収入合算できるため、単独の契約よりも大きな金額の借り入れができる可能性があります。ローン契約が1本なので、契約時の手数料や諸費用は1本分で済む一方で、住宅ローン控除は返済負担割合に応じて親子それぞれが受けることができます。借入期間は子の年齢を基準に設定するため、親が高齢の場合でもローンを組むことが可能です。また、フラット35でも親子リレー返済という名前で取り扱いがあります。

親子リレーローンの注意点は、多くの場合が団体信用生命保険の加入が子のみに限られていることです。親に万一のことがあった場合は子が債務を引き継ぐことになるため、別途生命保険に加入するなど対策をとっておく必要があります。(金融機関によっては、親子どちらかを選べる場合や、親子ともに加入可能な場合もあるため、事前の確認が必要です。)

親子ペアローンとは

親子ペアローンとは、1つの住宅に対して親子それぞれが住宅ローンを契約し返済していく方法です。親子同時に返済を行っていくため、親子リレーローンよりもさらに高額な借り入れができる場合があります。また、親子別々にローン契約を結ぶため、借入期間や金利タイプなどの借入条件をそれぞれが選択することができます。団体信用生命保険にもそれぞれが加入するため、一方に万一のことがあった場合でも、もう一方が返済負担を引き継ぐ必要はありません。

これらのメリットがある一方で、注意点もあります。ローン契約が2本になるため、契約時の手数料や諸費用が2倍かかります。また、お互いが連帯保証人になっているため、一方の返済が滞った場合にはもう一方が返済しなければなりません。自分のローンを返済しながら、もう一方の返済分も負担するとなると、かなり大きな負担になります。さらに、親子ペアローンはフラット35での取り扱いがなく、金融機関独自の住宅ローン商品での取り扱いとなります。

図表:親子リレーローンと親子ペアローンの違い
  親子リレーローン 親子ペアローン
ローンの契約数 1本 2本(親子それぞれ)
契約形態 親が主債務者
子が連帯債務者になる
親子が互いに
連帯保証人になる
返済方法 親が先に返済し
子が引き継ぐ
親子それぞれ同時に返済
借入期間 子の年齢が基準 親子それぞれ
自身の年齢が基準
収入基準 収入合算可能 親子それぞれ
自身の収入が基準
団体信用生命保険の加入 多くの場合、子のみ
(金融機関によって異なる)
親子それぞれが加入
住宅ローン控除 返済負担割合に応じて
親子それぞれ適用可能
返済負担割合に応じて
親子それぞれ適用可能

親子リレーローン、親子ペアローンの注意点

親子リレーローン、親子ペアローンそれぞれの注意点は先程説明したとおりですが、それとは別に、共通して気を付けておきたい点が4つあります。

1つ目は、資金の負担割合と住宅の持分割合を同じにしておく必要がある点です。資金の負担割合と持分割合が一致しない場合、贈与とみなされ贈与税が課税される場合があります。

2つ目は、相続時にもめないよう対策をする必要がある点です。親子ペアローンを組んでいた親が亡くなった場合、親の持ち分に対して相続が発生します。親子リレーローンを組んでいる親が亡くなった場合は、連帯債務者である子が自宅不動産を相続します。いずれの場合も、相続人が複数人いる場合には財産分与でもめないよう、あらかじめ家族で話し合い、場合によっては専門家に相談するなど、トラブルを回避するための対策をとっておきましょう。

3つ目は、契約変更が非常に難しい点です。住宅ローンは返済期間が長いため、途中で状況が変わることは珍しくありません。親子が不仲になった、家族構成が変わった、親または子が転勤になったなどの理由で別居したくなったとしても、親子リレーローンや親子ペアローンの契約変更は原則として認められません。金融機関によっては、新しい条件で審査を受け直すことで契約の見直しができるところもありますが、契約時と状況が変わると一括返済を求められる場合もあります。

4つ目に大切なのが、親子ともに無理なく返済できる借入金額に設定することです。親子リレーローンも親子ペアローンも、返済開始時期の違いはありますが、親子ともに返済義務を負うことに変わりはありません。そのため、余裕が無いとどちらかが返済に行き詰まったときに、他方が援助することが難しい場合があります。

二世帯住宅の購入を検討する人にとって、親子リレーローンや親子ペアローンは大きなメリットのある選択肢だといえます。一方で、生活の変化に対応しにくい点や、トラブルが起きる可能性などの注意点もあります。事前に家族でしっかりと話し合い、対策をとりながら進めるようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2023年05月26日