第920回

電気自動車は手軽に利用できる?コストは?

電気自動車への買い換えを検討しています。補助金もありメリットがありそうですが、充電器の設置費用などがどの程度かかるのか、ローンを利用することができるのか、コスト面が心配です。電気自動車を購入するにあたって注意することがあれば教えてください。(東京都 Mさん)
政府は2050年までに「カーボンニュートラル」を実現する目標を掲げ、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする方針を打ち出し、令和2年度補正予算で車種・グレード別に補助金制度を整備しました。購入にあたってはどんな補助金が得られるのか確認しましょう。充電器について助成金がある自治体もあります。どのように充電設備を設置するかでもコストは変わりますので、よく理解したうえでマイカーローン選びをするようにしましょう。

補助金を活用すれば初期にかかる費用は抑えられる

これまでは、電気自動車(EV)などのクリーンエネルギー自動車を新車購入する場合、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車等導入補助金(CEV補助金)」を受けることができました。これが、令和2年度補正予算成立によって、経済産業省の「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」、環境省の「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」の2種類の補助金制度がスタートしました。

従来からのCEV補助金は、定められたクリーンエネルギー自動車を購入する場合に、誰でも受給できるもので、補助金額は車種などによって異なります。今回新たに加わった2つの補助金は、電力に関わる内容となっており、非常用電源として電気自動車から家に電力を供給できる「V2H充放電設備」を導入したり、太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を使うシステムにするなど、電気自動車だけではなく、電力や充電設備に対しての補助金制度という内容となっています。補助金を受けるには、経産省、環境省それぞれの新補助金についての条件をクリアする必要があります。

個人の場合は、電気自動車を購入して自宅の電源を使い充電する、という利用の仕方が一般的でしょう。新補助金制度を利用しなくても、従来からのCEV補助金は受け取れますので、これだけでも十分といえるでしょう。電源や充電設備を新たに導入するかは、電気自動車の購入と併せて検討するようにしましょう。

また、地方自治体では、車両や充電器などに関する補助金や税の優遇制度を設けているところが数多くあります。国の補助金とともに、居住地の自治体の制度も確認しておくようにしましょう。

普通充電で基本的には十分で、充電器設置費用は10万円程度

ガソリン車は駐車スペースさえあれば、購入時に大がかりな工事が発生することはありませんが、電気自動車の場合は、充電器の設置工事が発生します。充電器は大別して2種類あり、家の駐車場などに設置し自宅での充電に使う「普通充電器」と、主に高速道路のサービスエリアやショッピングセンターなどに設置される「急速充電器」があります。普通充電器の充電時間は4~8時間程度、急速充電器は30分~1時間で80%程度まで充電できます。

個人での使用であれば、深夜など車を使わない時間に自宅で充電すれば十分で、頻繁に遠出するなど電気の使用量が非常に多く、普通充電器では間に合わないというケース以外は、急速充電器を設置する必要はないでしょう。

設置費用も壁掛け型の普通充電器であれば電気配線工事を含めても10万円程度が相場で、ディーラーの中には10万円までの設置費用を補助するところもあります。自治体が助成金制度を設けていれば、十分まかなうことができるでしょう。キャビネット型や門柱のような充電スタンドになると、20万~50万円など高額な工事費が必要になります。急速充電器は、主に商業利用を想定されており、設置費用も100万円単位となります。

200Vの電源が必要で、専用の分岐回線、専用の漏電ブレーカーの設置などの電気工事が伴いますので、その点も確認しておくといいでしょう。

マイカーローンの資金使途がどこまで含まれるかによって、資金調達の検討を

マイカーローンは多くの金融機関が取り扱っており、金利などの借入条件はさまざまですが、電気自動車などのエコカー購入の場合は優遇金利が適用されるケースもあります。また、エコカー専用の商品を扱っている金融機関もあります。

マイカーローンの資金使途は車体の購入費用のほか、自動車教習所の費用、車検費用、部品・アクセサリーの購入費用など、車に関連した費用であれば認められる商品が多くありますが、電気自動車の普通充電器の設置費用まで含まれるかどうかは、各金融機関によって取り扱いが異なるため確認するようにしましょう。

壁掛け型の普通充電器であれば、設置費用も10万円程度とあえてローンの中に含める必要はないかもしれませんが、キャビネット型だと高額になりますので、ローンに含めるかどうか検討してみてもいいかもしれません。また、これを機に車庫を新たに作るというケースもあるでしょう。車庫建築費用をマイカーローンで利用できる金融機関がありますので、比較検討してマイカーローンを選ぶようにしましょう。

車本体はマイカーローン、その他の工事や車庫の建築工事にかかる費用はフリーローンやリフォームローンを利用することも考えられますが、いずれにしても、無理のないローン返済かどうかは、慎重に判断することが大切です。補助金によって電気自動車が身近になってきました。ランニングコストもガソリン車よりもかなり抑えることができるという試算もあります。充電インフラの整備が待たれますが、個人での利用においては、まずは簡便な充電設備の設置にとどめ、電気自動車ライフをスタートしてもいいでしょう。

※各種補助金の申請は、一般社団法人次世代自動車振興センターが選定されています。センターより、申請者に補助金が交付されます。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2021年04月09日