第884回

今、住宅購入するときに考えておきたい保障とは

住宅購入を考えていますが、今後、会社の業績によっては収入が減ってしまうかもと思うと、今、住宅ローンを借りてもいいのか迷っています。収入保障がある住宅ローンはあるのでしょうか?(千葉県 Wさん)
住宅ローンを借りる際、団体信用生命保険に加入しますが、これは、契約者に万一のことがあった場合の保険で、収入減に対応した保障は、一部の住宅ローンに限られます。

返済中に万一のことがあった場合、団体信用生命保険で住宅ローンは相殺される

住宅ローンを借りるときに、一番大事なことはいくら借りられるかではなく、延滞なく返せるか、ということです。コロナ禍によって収入が減少し、住宅ローンの返済が困難になった人も少なくありません。無理のない返済プランを立てていても、長期にわたる返済期間中、何が起こるかわからない時代になったと言えるかもしれません。

収入が減った、ボーナスが予想外に少なくなったなどによって、返済が困難になった場合は金融機関に相談し、返済猶予や返済プランの見直しをすぐに行うことが重要です。

住宅ローンの返済で最も不安になるのは、契約者が亡くなったり、高度障害状態になってしまった場合です。このような万一に備えるために、多くの住宅ローンは団体信用生命保険(以下、団信)に加入することを義務づけています。

契約者に万一のことがあった場合、団信の保険金によって、残りの住宅ローンが相殺され、住宅ローンの返済がなくなります。基本的に団信の保険料は金融機関が負担するため、契約者が別途支払う必要はありません。

なお、フラット35については団信に加入しなくても借り入れすることができますが、その代わりに民間の生命保険で万一に備えての死亡保障を厚くする必要はあるでしょう。

住宅ローンに関しては、団信加入が最も大切な保障であると言えるでしょう。

倒産などで失業した場合に、保障される団信もある

最近は、疾病保障付き団信や、がんと診断された場合に返済が免除されるがん団信の取り扱いも増えています。

疾病保障付き団信の保障については、三大疾病保障(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)、八大疾病保障(三大疾病に加え、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)、全疾病就業不能保障(精神疾患を除く、すべての病気・ケガ)の3つが代表的なものです。それぞれ就業不能の状態、入院日数などによって保険金の支払い条件が異なります。

がん団信については、がんの確定診断がされると、残りの住宅ローンの50%が免除されるものと100%免除されるタイプがあります。

一部の金融機関では、疾病保障やがん保障をつけても保険料を無料とするところもありますが、多くの場合、金利に上乗せや別途保険料の支払いが必要になります。

また、収入保障ではありませんが、カーディフ損害保険株式会社が引受けしている失業保障をつけられる団信などもあります。住宅ローン返済中に勤務先が倒産・廃業した場合や、会社事由での解雇などで失業した場合に、再就職までの間、最長6カ月間、ローン返済を保障するものです。特約料は借入額100万円につき年間800円などのコスト負担があります。

団信は住宅ローンとセットになりますので、団信だけ別に契約することはできません。さまざまな保障がありますが、自分が借り入れを検討している金融機関の住宅ローンは、どんな団信で、どんな保障内容なのかをしっかり確認するようにしましょう。

ただし、保険料、特約料がかかる場合には、どこまでの保障を団信でカバーするかは、慎重に考えるべきでしょう。特に、現在加入している生命保険や医療保険と保障が重複していないかは、大事なチェックポイントです。

ボーナス払いはできるだけ抑え、毎月返済で返せるかどうかで考える

コロナ禍による経済的な影響は、さらに拡大していくでしょう。すでにボーナスの減額、ボーナス支給なしを公表している企業もあります。これから住宅ローンを組むのであれば、これまで以上に慎重な借入・返済計画が重要になってきます。

毎月返済のみで返せる額を基本に、住宅ローンの借入金額を決め、ボーナス返済はあくまでも補助的なものと考えるようにしましょう。ボーナスは企業業績に左右されるものです。ボーナスがたとえゼロになっても住宅ローンを返していけるのか、そうした借入・返済シミュレーションを行い、無理のない住宅購入をするようにしたいものです。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2020年07月27日