第817回

「住宅ローン控除」が延長、その特徴は?

住宅購入を検討中です。住宅ローン控除が延長されると聞きましたが、いままでの制度と違う点があるのでしょうか。(静岡県H)
消費税率10%が適用される住宅購入の場合、控除期間が3年延長されて13年になります。

※ご紹介する制度は、関連する税制法案が国会を通過・成立することが前提になります。ご了承ください。

控除期間が3年延長される

いわゆる「住宅ローン控除」とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得する場合などに、一定条件を満たす人が利用できる減税制度です。 年末のローン残高に基づいて計算された金額が、住み始めた年の分以後の各年の所得税額から控除することができます。

この住宅ローン控除の制度が、2019年10月の消費税率10%引き上げ後の住宅購入支援のために拡充されることになりました。 住宅ローン控除の控除期間は10年ですが、2019年10月から2020年12月までは、消費税率10%で住宅取得した場合の控除期間が13年に延長されます。

また控除額の計算方法は、10年目まではこれまでと同様に「年末の借入金残高の1%」ですが、11年目~13年目は「年末の借入金残高×1%」か、もしくは「建物価格(消費税別)×2%」を3年で按分したもののどちらかより小さいものが対象となります(表1)。 11~13年目に消費税の増税分(2%増)が還元されるわけですね。

なお所得税から控除しきれなかった金額は、現行と同様に控除限度額(所得税の課税総所得金額の7%(最高136,500円))の範囲内で、住民税から控除されます。

表1:所得税の住宅ローン控除額
消費税率10%が適用される住宅の取得等をした場合
居住年 控除期間 控除額
2019年10月~2020年12月 13年間 1~10年目 年末の借入金残高(4,000万円限度*)×1%
11~13年目 次の [1] [2] のうちいずれか少ない金額
[1] 年末の借入金残高(4,000万円限度*)×1%
[2] 建物購入価格(4,000万円限度*)×(2%÷3年)

* 長期優良住宅や低炭素住宅の場合は、年末の借入金残高の限度額は5,000万円、建物購入価格の限度額は5,000万円。

控除額は、ローン残高の減少に連れて減っていく

ただし、住宅ローン控除の制度は、借入額や所得税・住民税の額によって、受けられるメリットに違いがあることを覚えておきましょう。 そもそも、「年末の借入金残高(4,000万円限度)×1%」が控除されると言っても、最大の控除額を受けるには、年末のローン残高が毎年4,000万円を超えていて、かつ、納めるべき所得税と住民税の金額が合わせて40万円を超えている必要があります。 4,000万円以上のローンを組まなければ初年度であっても「年末残高4,000万円」にはなり得ませんし、返済が進むにつれて年末の借入金残高は減っていくので、控除額はだんだん少なくなっていきます。

また、11年目~13年目の控除額は、『「年末の借入金残高×1%」と「建物購入価格×(2%÷3年)」のどちらか少ない方』です。 借入残高が多ければ、「建物購入価格×(2%÷3年)」が控除額となって、消費税増税分(2%増)が還元されることになります。 しかし、借入金残高が少なくて「年末の借入金残高×1%」が控除額となった場合には、消費税率10%導入による負担増(2%増)はカバーしきれないことになります。

住宅購入を考えるなら必ずチェックしておきたい「住宅ローン控除」の制度ですが、ご自分の借入予定金額や所得税・住民税からどの程度の控除を受けられるか確認した上で購入計画の検討をしましょう。 低金利の住宅ローンが組めるなら、年間の利息支払額より控除され還付を受ける金額の方が多くなる事もあります。

「すまい給付金」「住宅資金贈与の特例」「住宅ポイント制度」なども拡充

消費税率10%導入にあたり、住宅ローン控除のほかにも、「すまい給付金」や「住宅資金贈与の特例」「住宅ポイント制度」などの拡充もあるので、合わせて利用できないかを検討されるとよいでしょう。

すまい給付金

消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設され、年収に応じた給付金が受取れる制度。 消費税率8%時は収入額の目安が510万円以下の方を対象に最大30万円、10%時は収入額の目安が775万円以下の方を対象に最大50万円の給付が受けられる。

住宅資金贈与の特例

父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金を贈与された場合に、一定額まで贈与税が非課税となる制度。 消費税率8%の場合は700万円(省エネ等住宅の場合は1,200万円)の非課税枠だが、2019年4月以降2020年3月までの契約でかつ消費税率10%の場合には、非課税枠が2,500万円(省エネ等住宅の場合は3,000万円)に拡がる。

次世代住宅ポイント制度

「環境」「安全・安心」「健康長寿・高齢者対応」「子育て支援、働き方改革」に資する住宅で、消費税10%がかかる新築・リフォームを対象として、さまざまな商品等と交換できるポイントが発行される制度。 1戸あたり最大35万ポイントが発行される。

消費税率の10%への引き上げはこれから住宅購入を考える方にとって厳しいものですが、消費税引き上げのショックを緩和するための施策も多く用意されています。 お得な制度を利用して、気に入った住宅をなるべく負担少なく手に入れられるように、情報収集を進めていきましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2019年03月05日