第708回

ディーラーや銀行以外で自動車ローンを利用するなら総量規制に注意!

年収の1/3近く借り入れがある状態で、自動車ローンを借りようと思っています。自動車ローンは「総量規制」の対象にならないと聞きましたが、本当でしょうか?(Rさん 会社員34歳、独身)
ノンバンクで自動車ローンを借りる場合は貸金業法の総量規制の対象となります。必ずしも「自動車ローン=総量規制対象外」ではない点に注意しましょう。

総量規制ってどんなもの?

まずは、「総量規制」についておさらいをしておきましょう。

クレジットカード会社からのキャッシング(ショッピング残高は除く)や消費者金融業者からの借り入れなど、個人が貸金業者からの借り入れで多重債務に陥ることがないよう、貸金業法という法律で借り入れの上限が定められています。 それが「総量規制」で、個人の借入総額が原則、年収等の1/3までに制限される仕組みを言います。

例えば、年収が480万円だった場合、クレジットカード会社からのキャッシングや消費者金融業者からの借り入れが利用できる上限は160万円。 これを超える借り入れは原則できないことになっています。

総量規制の「除外」「例外」となる借り入れ

ただし、総量規制の「除外」または「例外」となる借り入れがあります。

「除外」は総量規制の対象とならない貸付けで、次のようなものが該当します。住宅ローンや有価証券担保ローン、自動車購入時の自動車担保貸付けなどは総量規制の貸付残高には含まれません。 年収480万円で160万円の借り入れがあっても、この除外の分は借りることができます。

総量規制の「除外」となる貸付
・不動産購入または不動産に改良のための貸付け(つなぎ融資を含む)
自動車購入時の自動車担保貸付け
・高額療養費の貸付け
・有価証券担保貸付け
・不動産担保貸付け
・売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付け
・手形(融通手形を除く)の割引
・金融商品取引業者が行う500万円超の貸付け
・貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介
(施行規則第10条の21第1項各号)

一方、「例外」となるのは、貸付残高に合計されるものの、年収の1/3を超えてもその部分については返済能力を判断して貸付けができる、というものです。 緊急の医療費の貸付けや個人事業者に対する貸付けなどは、年収の1/3を超えていても借りられる場合があります。

総量規制の「例外」となる貸付
・顧客に一方的有利となる借り換え
・緊急の医療費の貸付け
・社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付け
・配偶者と併せた年収の3分の1以下の貸付け
・個人事業者に対する貸付け
・預金取扱金融機関からの貸付けを受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付け
(施行規則第10条の23第1項各号)

自動車ローンは「除外」されない

総量規制の除外項目に「自動車購入時の自動車担保貸付け」がありましたが、中には勘違いしてしまう人がいます。 これが指しているのはメーカーの「自動車クレジット」のことです。 「自動車クレジット」とは信販会社が車の販売店に代金を支払い、車を購入した人はその信販会社に対して返済をします。 一般的には、「ディーラーローン」と呼ばれています。 車の名義は、銀行等の自動車ローンだと自分名義ですが、自動車クレジットは完済するまでは、所有者=信販会社か販売会社、使用者=自分となり、完済後に初めて自分の名義となります。

つまり、貸金業者であるノンバンクが提供する自動車ローンは総量規制の「除外」の項目ではありません。 Rさんが利用しようとしているのがノンバンクの自動車ローンだとすると、「除外」はされることはありません。 「ディーラーローン」であれば、利用できる可能性があります。

とはいえ、年収の1/3近い借り入れを、キャッシングや消費者金融業者からの借り入れで行っている状態は健全ではありません。 早めに借り入れを返済し、貯められる家計を目指したいものです。

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私が書きました

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豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2017年01月17日