第622回

カードローンでは「臨時返済」をコツコツやって賢く返す!

カードローンで100万円を借りようと思っています。返済方式は「残高スライドリボルビング方式」で、返済のやり方には「約定返済」と「臨時返済」があるようですが、具体的にそれがどんな方法なのか使い分けのポイントがわかりません。また、借りた後、有利に返済する方法はないでしょうか?(東京都 30歳 会社員 男性)
カードローンでよく採用されている返済方式は「残高スライドリボルビング方式」で、毎月返済額がローン残高にあわせて変更される仕組みです。実際の返済のやり方には、毎月決まった日に決まった金額を返済する「約定返済」と、いつでもいくらでも返済できる「臨時返済」があります。「残高スライドリボルビング方式」の仕組みをちゃんと理解した上で、「臨時返済」を上手く行えば、有利に返済をすることができます。

「残高スライドリボルビング方式」は返済が進んでも元金がなかなか減らない!

「残高スライドリボルビング方式」は、ローン残高が多いと毎月返済額が多くなり、残高が少なくなれば返済額も少なくなる仕組みになっています。

【残高スライドリボルビング方式の毎月返済例】
ローン残高 毎月返済額
30万円以下 7,000円
30万円超50万円以下 10,000円
50万円超100万円以下 20,000円
100万円超150万円以下 30,000円

例えば上の表では、ローン残高が50万円超100万円以下の時は毎月返済額が20,000円ですが、返済が進んでローン残高が50万円以下になると、毎月返済額は10,000円になります。しかし、その後に新たに借り入れをして、ローン残高が再び50万円超になると、毎月返済額も20,000円に戻ります。

この方式のメリットは、ローン残高が増えると毎月返済額も増えますが、元金の返済はきちんと進むことです。例えば、実質年率14.5%、ローン残高100万円の時の返済額20,000円の内訳は、利息額12,083円、元金返済額7,917円になります。今後、ローン残高が150万円に増えた時、返済額が20,000円のまま固定されていると、内訳は、利息額18,125円、元金返済額1,875円となり、利息額が6,042円増えた分、元金返済額が少なくなってローン残高はなかなか減りません。

ローン残高が150万円になった時に返済額が30,000円に増えれば、内訳は、利息額18,125円、元金返済額11,875円となり、ローン残高は着実に減少します。

逆に、この方式のデメリットは、ローン残高が減ると毎月返済額も減るので、元金返済がそれほど進まなくなることです。同じ例でみると、ローン残高が50万円になった時の返済額10,000円の内訳は、利息額6,041円、元金返済額3,959円になり、元金返済のスピードが落ちてしまいます。仮に返済額が20,000円のまま固定されていれば、元金返済は13,959円となり、ローン残高が減るスピードはアップするはずです。

【ローン残高・毎月返済額別の元利構成例 (実質年率14.5%の場合)】
ローン残高 毎月返済額 返済額の内訳
(利息額) (元金返済額)
100万円
20,000円
12,083円
7,917円
150万円
20,000円
18,125円
1,875円
ローン残高:30,000円
18,125円
11,875円
50万円
10,000円
6,041円
3,959円
ローン残高:20,000円
6,041円
13,959円

「約定返済」だけでなく「臨時返済」を組み合わせて返済スピードを加速させる!

返済方法には「約定返済」と「臨時(随時返済)返済」の2種類があります。

「約定返済」は、毎月「5日」や「10日」、「月末」など、いくつかの選択肢から自分で指定した返済日や、金融機関が指定する返済日に、決まった金額の返済を行う方法です。具体的な手続きには、あらかじめ登録した銀行口座からの「口座引落」と、ATMなどでの「振込」等があります。

「約定返済」で注意すべきことは、返済が遅れると通常の利息とは別に、延滞利息(遅延損害金)が日割りでかかることです。通常の実質年率が14%台でも、延滞利息(遅延損害金)の年率は20%にもなる場合があります。「約定返済」では、返済日に確実に間に合わせるようにすることがポイントです。

「臨時返済」は、毎月の「約定返済」とは別に、ゆとりができたら都合に合わせて随時返済することです。「約定返済」による返済額の内訳が「元金返済額+利息額」であるため元金の減少に時間がかかるのに対し、「臨時返済」は「元金返済額」だけなので、返済した分だけ確実にローン残高が減り、完済までの期間を短縮できるとともに、支払う利息の総額を削減することができます。

「約定返済」が進んでローン残高が減り、毎月返済額が少なくなっても、これまでと同じ金額を支払うように、返済額の差額を「臨時返済」に振り向ければ、確実にローン残高を減らすことができます。

例えば、ローン残高が50万円超100万以下の時の毎月返済額20,000円と、ローン残高が50万円以下になってからの毎月返済額10,000円の差額10,000円を、臨時返済に活用するのです。

このように、「残高スライドリボルビング方式」の仕組みや、「約定返済」と「臨時(随時返済)返済」の機能、効果を知り、借りた後も工夫して有利な返済ができるようにしたいものです。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2015年05月09日