第600回

進学資金の準備は受験前から。教育ローンも早めに手続きを!

もうすぐ長男の受験。夫とも受験費用や入学金などについてもう一度話し合って、お金の準備も万全にしておきたいと思っています。場合によっては教育ローンの利用も考えていますが、進学先が決まり、入学してみないとどれくらいかかるのかわからない費用もあり、どの段階で利用額を決めて、手続きをすればよいのか悩んでいます。上手な資金の準備方法はないでしょうか。
進学先が決定してから教育ローンに申し込んでも、学費などの振込締切日に間に合わないこともありえます。受験前から複数の進学パターンで必要資金を試算し、できる手続きから進めておかれるとよいでしょう。

進学を決めたら進学資金の確認・準備

受験シーズンも本番、受験生を支えるご家族も大変な時期ですね。中でも大変なのがお金の準備です。お子様の選んだ進路にかかる費用が準備してきた教育資金では賄えないようなら、教育ローンの利用も視野に入ってきます。

進学費用がいくらになるのかはっきりしない、と悩んでおられるようですが、とにかくまずは、わかる範囲で受験費用・進学費用を試算してみましょう。第一志望校に進学した場合だけでなく、それ以外の進学する可能性のある学校についても、試算しておく必要があります。親元を離れる可能性があるなら、一人暮らしの費用なども試算しなくてはなりません。受験先が決まっていれば、学費や寮の費用などは学校の資料でわかるでしょうし、その学校付近のアパートやマンションなどの家賃相場も不動産関連サイトで調べることもできるでしょう。独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、アパート住まいの大学生の生活費は平均で年間110万円弱とのこと。どこに住むか、どんな生活をするかで生活費も変わってきますが、このような調査データも参考にされるとよいでしょう。

<大学生の生活費>単位:円
区分 学寮 下宿、アパート、その他
国立 公立 私立 平均 国立 公立 私立 平均
食費 247,300 198,400 212,600 218,300 278,900 247,000 253,600 260,300
住居・光熱費 196,000 225,900 302,300 282,500 509,200 463,000 455,500 471,300
保健衛生費 38,000 39,300 42,300 41,500 42,900 46,000 45,400 44,700
娯楽・し好費 128,800 112,600 130,200 129,600 143,100 143,500 147,900 146,200
その他の日常費 164,700 182,000 157,700 159,400 173,300 172,700 172,000 172,500
生活費合計 774,800 758,200 845,100 831,300 1,147,400 1,072,200 1,074,400 1,095,000

※独立行政法人日本学生支援機構「平成24年度学生生活調査」より 筆者抜粋

なお、進学資金の必要金額の目安となるのは、第一志望校へ進学した場合にかかる金額ではなく、進学可能性のある学校のうち、最も費用のかかる進学パターンです。もっとも費用のかかる進学パターンに合わせて進学費用を準備できていれば、どの学校に進学が決まっても、慌てずに済みますよね。

必要な進学資金はいくらまで家計から捻出できるのか、入学時にかかる費用の捻出が大変なのか、それとも入学後にかかりそうな予想しづらい費用が不安なのか、家計の状況も確かめながら検討してみましょう。

早めに仮審査を受けて教育ローンの手続きをスムーズに

教育ローンを利用する可能性があるなら、早めに申し込んだり仮審査を受けたりして、準備を進めておきましょう。受験シーズンは教育ローンの申し込みや手続きも集中する時期なので、手続きに時間がかかり、入学手続き金などの振込締切日に間に合わなくなる可能性もあります。教育ローンの申し込みや仮審査は、進学先が決定する前でも受け付けが可能な教育ローンも多くなっています。

たとえば、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」の場合は、融資の受付を1年中行っており、入学時の費用は合格発表前に申し込みができるので、志望校が決まった段階で申し込むように告知されています。申し込みの目安は、必要時期の2~3ヶ月前とされており、審査には最短で5営業日、その後融資実行まで1週間程度かかります。民間金融機関の教育ローンは、審査期間が」「国の教育ローン」よりも短いものが多いですが、あらかじめ仮審査を受けておけば、融資が受けられるのか、必要額が借りられるのかを確認でき、必要な時にスムーズに資金を確保することができるでしょう。

受験日や合格発表の日程によっては、複数の学校に入学手続き費用の振込が必要になったり、予定より早く資金が必要になったりすることもあるでしょう。受験費用に使える教育ローンもあるので、早めに利用しやすいローンを選んで、できる手続きを進めておかれるとよいでしょう。

必要な都度借りるならカードタイプの教育ローン

教育ローンには、教育資金を一括で貸し付ける「証書タイプ」のほか、限度額の範囲内であれば在学中なら何度でも借りられる「カードタイプ」があります。「入ってみないといくらかかるかわからない」費用が不安な場合や、進学費用の不足する時期や金額がはっきりしない場合は、カードタイプの教育ローンが利用しやすいでしょう。

カードタイプは、在学中なら限度額の範囲内であれば、必要な都度ATMで資金を引き出して借りることができます。返済は、在学中は毎月利子のみを返済すればよいことになっていますが、ATMで随時返済することも可能です。卒業後に元金と利子を返済していくことになり、卒業後の返済期間中は新たな借り入れはできない仕組みになっています。

ただし、カードタイプを利用するなら、「借りやすい」ことに油断して借り過ぎることのないように注意が必要です。また、随時返済を行なわず在学中は利子の支払だけを行っていると、卒業後の返済負担は重くなります。カードタイプを利用するなら、自制心を持って借り入れは必要な分だけに限り、随時返済も積極的に行って、「必要な時に必要なだけ借りられる」メリットを存分に生かした利用をしましょう。

お子様が見事合格を勝ち取った時から、進学資金の本格的なやりくりがはじまります。在学中の家計に無理なく、かつ、将来に重い返済負担を負うことのないように、上手に教育ローンも活用したいですね。

教育ローンの利用を検討される際には、過去のFPアドバイスも参考になさってください。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2014年12月04日