第572回

ギリギリまでかさんだクレジットカードの利用限度額。ローンで効率的に返済を。

GWに外出先でクレジットカードを使おうとしたら、使えないとお店の方から言われてしまいました。クレジットカード会社に問い合わせると、クレジットカードの更新の際に利用限度額が見直され、50万円の利用限度額が30万円に引き下げられたとのこと。通知を見落としていたようです。 光熱費や通信費、外食など支払いのほとんどをクレジットカードのリボ払いにしているので、身動きがとれません。新しいクレジットカードを作るという方法しか思いつかないのですが、何かいい方法はないでしょうか。(愛知県 S)
「身動きがとれない」ほど利用残高がかさんでいる状況では、たとえ新しいクレジットカードが作れたとしても借金を増やすだけで解決策にはなりません。まずは、現在の支払い状況を確認し、家計を立て直しましょう。低金利のおまとめローンへの借り換えも検討されるとよいでしょう。

クレジットカードの利用限度額は、「支払可能見込額」で決まる

外出先でクレジットカードが使えなかったら焦りますよね。クレジットカードの利用限度額は、新規申し込みの際だけでなく、更新時や利用限度額の増額を申し込んだ際にも見直しが行われます。更新時に新しいクレジットカードが送られてきたときには、利用限度額なども必ず確認しておきましょう。

平成22年12月に施行された改正割賦販売法により、クレジットカード会社はクレジット利用者(翌月一括払いを除く)の「支払可能見込額」を算定することが義務づけられており、その9割までを利用限度額にするとされています。年間の支払可能見込額は、年収から生活維持費、クレジット債務を差し引いて算定されます。なお、算定の際の「クレジット債務」とは、リボ払い・分割払いなどの年間支払予定額(翌月一括払いは除く)のことです。したがって、クレジットカード会社はクレジット債務を調査するために、指定信用情報機関に個人信用情報を登録・照会する義務も負っています。

ご相談者のようにリボ払いで利用限度額いっぱいまで利用している場合は「クレジット債務」額が大きくなるので、年収や生活維持費の額が以前と変わっていなくても、算定される支払可能見込額は小さくなります。その結果、利用限度額も減額されたのでしょう。

改正割賦販売法や支払可能見込額については、以前のコラムも参考になさってください。
【参考リンク】

クレジットカード頼みの生活を見直して

では、クレジットカードをこれ以上利用できない状況を乗り切るにはどうすればよいのでしょう。ご相談者は、利用限度額減額のピンチを、新しいクレジットカードを作ることで乗り切ろうと思われたのですね。改正割賦販売法では、「利用限度額30万円以下であれば、過剰な債務や延滞等を確認する簡易な審査で発行可能」とされているので、「過剰な債務や延滞がない」とクレジットカード会社が判断すれば新しいクレジットカードを作れる可能性もあります。

しかし、現在保有しているクレジットカードのリボ払いで「身動き取れない」状況なのに、新しいクレジットカードの利用分も返済していくことは相当難しいですよね。新しいクレジットカードを作るより、現在の支払状況を見直して、利用限度額の範囲内で無理なく快適に生活できるよう考えたほうがよいでしょう。

低金利のおまとめローンを活用して効率的な返済を

まずは、早めに現在の支払い残高を減らすことを考えましょう。返済期間が長くなるほど手数料もかさんでいきます。クレジットカード会社に連絡したり、インターネット上で手続きしたりすることで、リボ払いの毎月返済額を増額したり、まとめて返済したりすることもできます。

また、複数のクレジットカードのリボ払いやキャッシングなどの返済があるのなら、低金利のおまとめローンを利用して完済し、返済を一本化する方法もあります。クレジットカードのリボ払いの手数料は15%程度ですが、おまとめローンなら金利10%程度の商品もあります。低金利のおまとめローン1つにまとめられれば利息負担が減り、さらに返済日も毎月1日になって管理がラクになり、効率的に返済を進めることができます。

おまとめローンの利用については、過去のコラムも参考にしてください。
【参考リンク】

無理のない返済方法を選ぶ

現在の支払残高解消に目途がついたら、今後のクレジットカードの利用の仕方や返済の方法も見直しておきましょう。一括払いや分割払いなら、大きな買い物をした後は返済負担が大きくなりますが、リボ払いで返済していると契約した金額だけ毎月返済すればよいので返済負担をあまり感じずに済みます。しかし、リボ払いは支払残高があるかぎり支払いが続くため、どの商品の支払いが終わったのか分かりにくく、無計画に利用すると長期間返済が続き、なかなか完済に至らないというデメリットがあります。

大きな買い物で計画的にリボ払いや分割払いを利用する場合はともかく、公共料金の支払いなど毎月発生する支出にクレジットカードを利用するのなら、手数料のかからない翌月一括払いで返済できる範囲での利用にとどめたほうがよいでしょう。

一括払いの場合は、リボ払いと違い毎月の返済額は上下しますが、「先月これだけ使ったんだ」と実感できて、無駄遣いを防ぐ抑止力にもなるでしょう。さらに、1か月のクレジットカード利用は○円までと、自分なりの無理のない「利用限度額」を決めて利用すれば、毎月の返済額の管理もしやすくなりますね。

<クレジットカードの返済方法>
翌月一括(1回)払い 商品等を購入した翌月に一括して支払う方式。一般に手数料はかからない。
ボーナス一括(1回)払い 商品等を購入した翌ボーナス時期に一括して支払う方式。一般に手数料はかからない
分割払い 利用の際、支払回数、月々の支払額を決めて支払っていく方式。支払回数を多くすれば、月々の支払いを少なくすることができる。利用金額や支払回数に応じた手数料がかかる。
リボルビング払い 月々の支払金額を一定額または「残高」(支払わなければならないお金)に対する一定率に決めておき、その額を支払っていく方式。手数料は「残高」に応じて計算される。

本来、クレジットカードは、多額の現金を持ち歩くことなく大きな買い物ができ、日常の買い物や支払いをクレジットカード払いにすればポイントも貯まって、お得で便利な存在です。ただし、「お得で便利」なのは滞りなく、無理なく返済できていればこそ。ポイント目当てにクレジットカード払いを多用して、カード手数料ばかりか、さらに延滞手数料まで払ったりすることになってはお得どころか、家計を苦しくするためのクレジットカード利用になってしまいます。自分にとって「お得で便利」なクレジットカードの使い方を見つけましょう。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2014年05月21日