第565回

2014年の公示価格が公表。土地の価格にも格差広がる!?

最近、都内の地価が上がったと聞きました。東京オリンピック開催も決まり、これから世界中の人々を招くために都内のインフラ整備や施設開発が進んで、土地の価値も上がりそうですね。周りでは、投資用マンションを購入するなんて話も聞きます。 土地の価値がどれだけ上がっているのか、何を見ればわかりますか?行く行くは住宅購入を考えていますが、急いだほうがよいでしょうか。
土地の価値は一物多価と言われていますが、その地域の価格動向を見るなら、毎年3月に公表される公示価格を見るとよいでしょう。 住宅購入を考えておられるのならば、土地の価格動向をチェックしつつ、ご自分のライフプランや資金プランを検討した上で、慌てずに後悔しない住宅購入計画を目指しましょう。

土地の価格は一物多価

先日(2014年3月18日)、2014年1月1日現在の公示地価が発表されました。土地の価格動向を見るなら、この公示価格をまず参考にされるとよいでしょう。

公示価格は、一般の土地取引や公共事業用地を取得する際などの価格の指標とするために、土地用途を「住宅地」「商業地」「工業地」に分類して国土交通省が公表しています。相続税や贈与税の算定基準となる路線価は公示価格の8割、固定資産税の課税標準となる固定資産税評価額は公示価格の7割程度を基準として設定されることになっており、公示価格はまさに基準となる価格なのです。公示価格が上下すると、合わせて路線価や固定資産税評価額も上下します。

ただし、土地の価格は常に変動しており、公示価格は限られた地点(2014年は2万3,380か所)・時点での調査なので、発表時点の取引価格とは乖離した価格になっている場合もあります。実際に土地が売買される際には、地形や立地、売主や買主の個別事情などによって、価格は違ってきます。従って、公示地価はおおまかな動向をつかむための参考としてチェックされるとよいでしょう。

なお、土地の価格については、過去のコラムでもとりあげていますので、参考になさってください。

【参考リンク】

都市部の地価は上昇傾向

では、今回発表された公示価格を基に、価格動向を見てみましょう。

相談者がおっしゃるように、東京都内などの都市部では地価は上昇傾向にあります。昨年までは三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)でも下落が続いていましたが、今回は住宅地、商業地ともに上昇に転換して、1年を通して上昇しています。

住宅地の上昇の背景には、住宅ローンの低金利化の継続や住宅ローン減税、景況感の改善などによる住宅需要の拡大が考えられます。商業地も景況感の改善による消費の回復傾向やオフィス需要の拡大のほか、住宅地の需要拡大で商業地がマンション用地として利用されるといった要因もあるようです。

東京圏の特に湾岸地区では、東京オリンピック開催決定によるインフラ整備への期待からマンション人気が高まり、地価も上昇しているようです。

地方では、下落傾向が続く地域も

全国的にはどうかというと、全国平均では依然として下落しているものの、下落率は縮小してきています。全国の調査地点のうち、上昇地点の割合は前年の8.1%から30.9%に増加しています。東日本大震災で被災した宮城県や福島県では、復興に伴う移転需要で住宅地の上昇率が10%を超える地点もありました。

しかし、全国の地価がどこでも回復傾向にあるわけではありません。三大都市圏では51.3%の地点で上昇したのに対して、地方圏は下落地点が76.1%と大きな差が出ています。高齢化が進み人口の減少が続く地域や自然災害の懸念が大きい地域などの下落率が大きくなっています。

<地点数と割合(全用途):2014年>
  地点数(割合)
上昇 横ばい 下落
全国
7,102(30.9%)
3,536(15.3%)
12,379(53.8%)
三大都市圏
5,310(51.3%)
2,298(22.2%)
2,746(26.5%)
地方圏
1,792(14.1%)
1,238(9.8%)
9,633(76.1%)

※ 国土交通省 「平成26年地価公示の概要」より 著者抜粋

価格動向だけでなく、ライフプラン上の「買い時」も見極めて

このように、2014年の公示地価によると、全般的には上昇傾向にあるものの、上昇地域・下落地域の差が開いている状況にあります。今後、住宅購入を考えるなら、平均値の上昇・下落に惑わされず、購入希望地域の土地の動向を見極めることが大切です。購入希望地域に近い公示地価の評価地点の土地の動向をチェックするのはもちろん、購入希望地域と似たような状況の評価地点の動向をチェックすれば、どんな要因で土地の価格がどのように上下するのかを推測する参考にもなるでしょう。

また、住宅購入は安ければよいというわけでもありません。自分や家族の人生のどの段階で買うのがいいのか、どんな立地・物件がいいのか、自己資金が準備できているのかなど、ライフプラン上の「買い時」も考える必要があります。価格動向をチェックしつつ、慌てずに、自分と家族の生活に合う、無理のない住宅購入計画を立てていきましょう。

住宅購入の「買い時」については、過去のコラムも参考になさってください。

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私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2014年03月26日