第537回

浦安に高級住宅地誕生!無理のない購入計画を立てるには?

住宅購入を考えはじめ、休みの日には夫と住宅展示場を見て回っています。そんな中、浦安で「ジ・アイルズ」という大規模な宅地分譲が行われるという記事を見つけました。通勤にも便利な地域で、太陽光発電標準装備と、かなり魅力的です。 ただし、中心価格帯が7,000万円台と高額で、考えていた予算を大幅にオーバーします。でも、最近、親が住宅購入資金の援助を申し出てくれたので、購入してもよいかもと思い始めました。 我が家は共働きで、現在の年収は合わせて1,000万円程度、夫婦+子1人(幼稚園)の3人家族です。自己資金は、貯蓄と親からの援助を合わせると2,000万円くらいになりそうです。7,000万円台の住宅購入は難しいでしょうか。(千葉県 Hさん 35歳)
毎月返済可能な金額から、「借入可能金額」を試算して資金計画を考えましょう。住宅購入の際の税金や手数料、家具・家電・引っ越し費用などの諸費用も忘れずに予算に組み込み、その上で、希望物件が購入可能かどうか検討されるとよいでしょう。

住宅購入の際には、物件価格プラス諸費用が必要

ご相談者が見つけられた浦安の「ジ・アイルズ」は、住宅メーカー三社が共同展開するスマートハウス(ITを使って、家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅)の分譲地ですね。平均価格帯が7,000万円台ということなので、物件価格を7,200万円と仮定すると、一般的に諸費用(税金・手数料・引っ越し費用、家具・家電等の費用)として物件価格の5~10%がかかりますから、7,600~8,000万円近くが必要になります。

住宅金融支援機構の調査(2012年度)によると、一世帯あたりの耐久消費財購入額の平均は、一戸建て(新築)は155.1万円、建売住宅で95.5万円、中古住宅で45.5万円です。一概にはいえませんが、こだわりの住まいであるほど、カーテンや照明器具、家具などの耐久消費財にかける金額は高くなるようですね。ちょっと背伸びしてでも購入したい物件であればなおさら、諸費用は大目に見積もっておいた方がよさそうです。

また購入後は、固定資産税などの税金がかかり、メンテナンス費用が必要になることも忘れないようにしましょう。

返せる金額から、借入可能金額を試算してみよう

次に、返済可能額から、借入可能金額を試算してみましょう。

本来なら、毎月ローンの返済に充てられる金額は、具体的な家計データを用いて、収入金額から生活費の金額を差し引いて求めたいところです。しかし、H家の家計の詳しい状況はわかりませんので、一般的に、収入に対する住宅ローンの返済負担率の目安として挙げられる「年収の25%」を目安に試算してみましょう。

Hさんのご家庭の年収は1,000万円なので、その25%は250万円。3人家族の年間生活費として750万円が確保できるので、H家の生活費支出が一般的な金額であれば、年収の25%以内のローン負担であれば無理はないと考えられます。生活費支出が少なく、ローン返済に年収の25%以上をまわすことが可能なら、借入可能額はもっと大きくなります。

そこで、イー・ローンの住宅ローン借入可能額シミュレーションで、毎月返済額を15万円、20万円、25万円の3通りに設定して、借入可能金額を試算してみました。金利は現在(2013年9月)のフラット35(全期間固定金利)の金利を参考に2%に設定しています。

<返済可能額から試算した借入可能額>
条件:金利2% 35年返済 ボーナス返済なし
毎月返済額 15万円 20万円 25万円
年間返済額 180万円 240万円 300万円
借入可能額 45,281,273円 60,375,031円 75,468,789円

【参考リンク】

「ジ・アイルズ」の住宅購入費用の必要額を仮に8,000万円とすると、Hさんは自己資金として合計2,000万円が用意できるとのことなので、住宅ローンで準備したいのは差額の6,000万円です。試算結果からみると、月額20万円の返済を無理なく35年間続けられるのであれば、必要な資金をローンでまかなうことができることになります。

将来も返済に無理のないローン計画を

しかし、現在は返済可能な借入額であっても、将来に渡って無理がないとは限りません。次に、これからのご自分や家族のライフプランを考えて、将来に渡って無理のない借入額であるかどうかを検討しましょう。

・将来の収入・支出はどう変化する?

現在の収支状況のままなら月額20万円の返済も可能でしょうが、将来に渡って年間1,000万円以上の収入が確保できるでしょうか?たとえば、将来、もう一人お子様を…と考えておられるのであれば、出産・育児のための休職・退職・転職などにより、収入が減少する可能性があります。

また収入は変わらなくても、お子様が成長すれば教育費負担が重くなっていき、進路によっては支出額が大きく増えて、やりくりが難しくなる可能性もあります。

借入可能額を試算する際の返済可能額は、現在だけでなく将来のライフプランも考慮して、無理のない金額を設定する必要があります。

・無理のない返済期間を設定する

さきほどの試算では、返済期間を35年と設定しましたが、完済時の年齢はおいくつになるでしょうか?借り入れ時に35歳なら、35年の返済期間が終わるころには70歳になります。リタイア後、収入が激減してから返済を続けることは難しいものです。特に借入額が大きい場合は返済できなくなるリスクも大きくなります。返済期間は、なるべく現役のうちにローン返済が終えられるように、設定しましょう。返済期間を短くすると、総利息負担は少なくなりますが、毎月返済額は多くなります。

毎月の返済額を抑えるために、やむを得ず返済期間を長く設定するなら、将来、繰上げ返済や退職金を利用した一括返済で返済期間を縮める計画も、あらかじめ考えておきたいものです。

仮に、上記で予定した6,000万円の借り入れをした際の、返済期間ごとの返済額をみてみましょう。

<返済期間による毎月返済額の違い>
条件:借入金額6,000万円 金利2% ボーナス返済なし
返済期間 35年 30年 25年
毎月返済額 198,758円 221,772円 254,313円
総利息負担額 23,478,218円 19,837,806円 16,293,781円

【参考リンク】

このように、用意できる自己資金や年収から試算すると、ジ・アイルの住宅の購入は、H家にとって必ずしも無理なものではありませんが、将来に渡って無理がないとは言い切れません。ローン計画に無理があって将来、返済が滞ってしまうことがあれば、せっかく手に入れた憧れの我が家を手放すことになりかねません。

今後のライフプランを確認し、現在の家計から将来の収入の減少・支出の増加の程度を見極めた上で、将来に渡って無理のない返済額を想定して、借入可能額を求められるとよいでしょう。無理のないローン計画が立てられるのであれば、ジ・アイルズなどの高額物件の購入も現実的になっていきます。

住宅取得資金贈与の特例も活用

なお、平成26年12月末までは、直系尊属(親や祖父母など)からの住宅取得資金の贈与には、一定額まで贈与税がかからない特例があります。たとえば、通常、500万円の贈与を受けたらかかる贈与税53万円を、節約することができるのです。親御さんからの贈与を受ける際には、手続きを忘れないようにしましょう。

<直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税限度額>
  省エネ等住宅*の場合 省エネ等住宅以外の住宅の場合
平成25年 1,200万円 700万円
平成26年 1,000万円 500万円

* 省エネ等住宅とは、省エネ等基準に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の証明書等を、贈与税の申告書に添付することによって証明がされたものをいう。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2013年09月13日