第504回

学校提携の教育ローンは、最も有利な借り入れなの?

大学受験生の息子がいます。息子の第一志望は東京の私立大学ですが、この大学に進学することになった場合の進学資金に不安があります。東京では、住居費、生活費も高くつきそうでハラハラしています。家計は苦しいですが、息子の志望大学への思いは強いので、お金を借りてでも、進学資金を用意したいと思います。志望大学のHPに紹介されていた教育ローンを利用するのが一番良いのでしょうか?
学校提携の教育ローンは、ネットで申込できて審査期間も短いのですが、金利は高めです。他の教育ローンと比較検討した上で選びましょう。また、入学後のお子様の生活費であれば、奨学金の貸与を受けるという選択肢もありますので、総合的に考えましょう。

教育資金の調達方法にはたくさんの選択肢がある!

センター試験も終わって、大学受験シーズンもいよいよ佳境ですね。お子様の合格を祈りつつ、ご相談者のように、進学資金の準備に悩まれている親御さんも多くいらっしゃることでしょう。

準備してきた預貯金等では進学資金が足りないときには、教育ローンが強い味方になります。国の教育ローンをはじめ、民間の金融機関が提供している教育ローンには、さまざまなタイプや商品があるので、比較検討した上で、上手に使いたいものです。ローンの申込の際には、審査があり、資金が振り込まれるまでに時間がかかる場合もあります。すでに受験シーズンも佳境ですから、すぐにでも情報を集めて、動き出しましょう。

まずは、いつ、どのくらいのお金を借りたいのかをはっきりさせることが大切です。合格後すぐに必要な入学金、授業料などの学校納入金、住居費や生活費等、どの程度まで家計でまかなうことができるのかをはっきりさせて、いつ、いくら借りたいのかを確定します。借りたい金額や時期、用途によって、利用できるローンも違ってきます。

この時期に必要な入学金等で教育ローンの申込を検討している場合は、以前のコラムでも取り上げているので、参考になさってください。

【参考リンク】

また、入学後の都内での生活費については、お子様自身が奨学金の貸与を受けるという選択肢もあります。見事合格した際には、ご家族の間でよく相談して教育資金の調達方法を決めてください。

【参考リンク】

学校提携の教育ローンは、お金が学校に直接振り込まれる

ご相談者が見つけられた、学校提携の教育ローンは、信販会社が提供しており、保護者が信販会社にローンを申し込むと、提携先の大学や短大、専門学校に学費が直接振り込まれる仕組みになっています。同じ信販会社の提供するローンでも提携する学校によって金利が異なり、現在は大体実質年率4%前後のようです。

インターネット上で申込でき、審査も最短1日で済むので、合格発表後すぐに必要な入学金等を借りたい場合などに便利なローンですが、借りたお金(学費)は直接学校の口座に振り込まれるということに注意が必要です。したがって、借りられるのは、入学金や授業料、教材費等や学校に振り込む寮費など。定期代やアパートの家賃など、学校に払わない教育費を借りることはできません。国の教育ローンなどでは、学校納入金のほか、家賃や交通費、教材費等、学生生活に必要なその他の資金も対象になっています。

また、金利は実質年率4%前後と高めです。国の教育ローンや銀行等の教育ローンは、窓口での手続きが必要だったり、審査期間が長かったりしますが、金利は、国の教育ローンが金利年2.45%(保証料除く)、銀行の変動金利の教育ローンは実質年率2%(保証料を含む)程度からとなっています。

【参考】教育ローンの比較
金融機関名 オリコ 千葉銀行 日本政策金融公庫
ローン名
国の教育ローン
金利
3.500% ~ 6.900%
(保証料を含む実質年率)
2.200% ~ 2.400%
(保証料を含む実質年率)
2.45%*
(保証料別途)
金利体系
固定金利
変動金利
固定金利
融資限度額
10万円 ~ 500万円
※1回の利用金額は納付書(振込用紙)、募集要綱などに記載された金額以内
10万円~3,000万円(当座貸越方式は1,000万円以内)
子ども1人につき300万円
審査回答期間
最短1日
2日程度
10日間程度、更に、融資金を口座に振込むまでに1週間程度。
資金使途
入学金・授業料・教材費・実習費等、学校へ払う学納金。
※学校との取決めで一部取扱い出来ない費用もある。
※学校にお支払いする寮費(一部利用できない学校もある)。

以下の費用は利用できない。
・学校以外に支払う費用(教材費、留学費、寮費など学校以外の業者へ直接支払う場合)
・定期代などの交通費や生活費
入学金・授業料・教材費・制服代・定期代・アパートの敷金・仕送り・資格取得・自己啓発費用※など教育に関する一切の費用、他金融機関の既存教育ローンの借換資金、借換に伴う諸費用(支払利息・印紙税等)
※証書貸付方式のみ。
10日間程度、更に、融資金を口座に振込むまでに1週間程度。
・学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)
・受験にかかった費用(受験料、受験時の交通費・宿泊費など
・住居にかかる費用(アパート・マンションの敷金・家賃など)
・教科書代、教材費、パソコン購入費、通学費用、修学旅行費用、学生の国民年金保険料など。
特徴・注意点
・入学金・授業料などの振込はオリコから学校からの指定日に学校指定口座へ直接振込まれる。
・千葉銀行の営業区域内に住所(居住)もしくは事業所・勤務先があること。
世帯の年間収入や子供の人数に応じた上限を超していると申し込めない。
入学時の費用は合格前に申込可能。

(2013年1月25日現在の情報を基に筆者作成)

* 国の教育ローンは、基金による保証を受ける場合には、別途保証料がかかる

学校提携の学費ローンは、目前に迫った学費の振り込みに資金の準備が間に合わない場合には、とても便利なローンですが、なるべく低金利で借りたい時や、住居費や交通費まで借りたい場合は、その他の教育ローンも比較検討してみましょう。

教育ローンの申込がピークを迎えるにあたって、金融機関の手続きが遅延する可能性もありえます。教育資金を利用すると決めたなら、なるべく早く動きはじめましょう。時間に余裕がないと、「すぐに借りられる」ことだけを優先してローンを選ばざるを得なくなります。「学校提携だから安心、お得」と決めてかからずに、比較検討した上で有利な教育ローンを選び、サクラサク春に向かって、お子様へ万全の支援体制を整えておきましょう。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2013年01月25日