第486回

住宅ローン減税の見直しで住宅取得に影響は出るのか?

新聞記事で住宅ローン減税が変わりそうなことを目にしました。数年以内には住宅を購入するつもりなので、住宅ローン減税がどう変わるのか気になっています。(A・Iさん 34歳 会社員)
住宅ローン減税は、来年(2013年)末で期限が切れます。一方で、2014年4月から消費税が上がることもあり、国は、住宅取得の負担を軽くするための見直し策を検討しています。どんなことが検討されているか、現段階でわかってきたことをみておきましょう。これらの外部要因を参考にしつつ、ご自身でしっかり計画を立てることが重要です。

住宅ローン減税見直しに関する2つのニュース

住宅ローン減税は、住宅ローンを借りてマイホームの購入や増改築をして一定の条件を満たすと、借入金のローン残高の一定割合を所得税から控除してくれる制度です。今の段階では、2013年末までに入居した場合が対象で、入居が2014年にずれ込むと控除は受けられなくなります。つまり、あと、約1年3ヵ月で期限切れになるということ。控除期間と控除率は変わりませんが、住宅ローンなどの年末残高と10年間の最大控除可能額は、2012年と2013年では異なります(下表参照)。

■現行の住宅ローン減税の概要
居住年 住宅ローンなどの
年末残高の限度
控除期間 控除率 10年間の
最大控除可能額
2012年 3000万円
(4000万円)
10年 1.0%
(1.0%)
300万円
(400万円)
2013年 2000万円
(3000万円)
200万円
(300万円)

※筆者作成。カッコ内の数字は認定長期優良住宅の場合。

現在、この住宅ローン減税の見直しが検討されていますが、この件に関して2つのニュースが出ています。1つは、 2013年入居分を、2012年と同じに据え置くこと。2013年は「復興支援・住宅エコポイント」制度の継続は見送られることから、住宅購入の負担を少しでも軽くするための配慮です。

もう1つは、2014年4月1日から消費税が5%から8%に引き上げられることに配慮して、住宅ローン減税は2014年以降も延長されそうなことです。消費増税による住宅購入者の負担を和らげるためです。控除期間や控除額の上限などの内容はこれから調整されますが、減税期間は現行の10年から15年に延長、減税額は最大で1000万円規模に増額するという拡充策が検討されています。また、所得税額が計算上の減税額に届かない個人には差額を住宅エコポイントなどで給付することも検討するそうです。

住宅取得は、自分にあった返済プランを立てるが重要!

住宅ローン減税の2つの見直し策は、まだ決定したわけではありません。A・Iさんには、今後、住宅ローン減税がどのような内容になるかに注視していただくとともに、数年後のマイホーム購入に向けて、具体的な住宅取得計画を考え始めることをおすすめします。

計画を考えるにあたって重要なことは、減税などの外部要因ではなく、ご自身の返済プランです。住宅ローンの返済は長期になるのが一般的なので、将来にわたるライフプランとそれに伴う家計を見据えたプランを立てることがポイント。つまり、無理のない返済プランを考えるということ。

そのためには、まず、頭金と諸費用をプラスして予定物件価格の20%から30%を用意します。そして、住宅ローンは「借りられる金額」ではなく、「返していける金額」で借り入れるようにします。金利のタイプ・返済期間・金利・毎月の返済額を入力すると借入可能額がシミュレーションできる銀行もありますので、そういった銀行のホームページで借り入れられる金額を把握しておきましょう。もし、返していける金額の借入金では予定物件価格の80%に達しない場合は、物件価格を下げるなど計画の見直しが必要です。次に、住宅ローン選びですが、そのポイントの1つは金利タイプ選びで、これは長期固定金利を利用するのが基本と考えて。どのようなローンがあるか、イー・ローンのサイト全体を使って、調べ始めておくといいでしょう。

具体的なケーススタディとして、過去のアドバイスを参考になさってください。

私が書きました

小川 千尋 (おがわ ちひろ)

ファイナンシャル・プランナー。

1994年ファイナンシャル・プランナー資格取得。資格取得後、以前から携わっていた出版物の編集・執筆の経験を活かし、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー誌や一般誌、新聞、ウエブサイトなどのマネー記事の編集・執筆・監修などの執筆関連業務および個人のライフプランなどの相談業務、セミナー講師として活動。

※執筆日:2012年09月14日