第403回

カードローン選びの前に、「借入可能額」の確認を

来年、次男の受験を控えています。塾の月謝や受験費用などで家計のやりくりが難しくなりそうです。長男のときはカードローンの利用で乗り切りましたが、最近は総量規制とかで、借りにくくなったと聞きます。今後も必要な金額が借りられるのか、不安です。(三重県 T)
総量規制により、貸金業者から「年収の3分の1」を超える貸付は受けられません。事前に借入可能な金額を把握して、家計のピンチに備えておきましょう。

総量規制導入後、貸付件数・金額は減少

昨年6月に改正貸金業法が全面施行され、その一貫として総量規制が導入されました。原則として「年収の3分の1を超える貸付は行わない」という総量規制の導入でどのように「借りにくく」なったのか、日本貸金業協会のデータで見てみましょう。
2011年1月発表の月次統計資料によると、キャッシングやカードローンなどの消費者向け無担保貸付の貸付件数や貸付金額は減少を続けています(表1)。前年同月比を見てみると、契約件数よりも月間貸付金額の減少幅のほうが大きくなっています。借入残高が「年収の3分の1」を超えていれば新たな借入れはできず、借入残高が少なくても「年収の3分の1」との差額分までしか借りられないため、1件あたりの貸付金額が少なくなっていると考えられます。まとまった金額を借りるのが以前よりも難しくなったと感じるケースが増えているのではないでしょうか。
また、収入のない専業主婦(主夫)が原則としては借り入れできなくなったことも、貸付金額や件数を減らした一因でしょう。総量規制の例外として、専業主婦(主夫)も、配偶者の同意を得て、配偶者と合算して(2人分の)収入の3分の1まで借り入れることはできます。しかし、その場合は、書類(配偶者の同意書、配偶者との婚姻を証明する書類、配偶者の収入を証明する書類)の提出が必要になるため、借り入れのハードルが高くなっているといえます。

<表1:消費者向け無担保貸付の月間貸付金額と月間契約件数>
調査対象月 2010.7
(確報)
2010.8
(確報)
2010.9
(速報)
2010.10
(速報)
2010.11
(速報)
調査対象社数 64社 63社 62社 59社 59社
月間貸付金額(百万円) 270,615 259,188 262,883 226,105 229,766
前年同月比 -42.9% -45.7% -46.7% -51.4% -51.1%
月間契約件数(件) 789,927 750,250 738,106 757,453 750,645
前年同月比 28.5% 27.0% 29.4% 25.8% 21.4%

※「契約数」にはクレジットカード業態における、キャッシング機能付クレジットカード、ローンカードの発行件数も含まれている。

(日本貸金業協会 平成23年1月発行「月次統計資料」より抜粋)

総量規制導入後、貸付件数・金額は減少

一方、貸出金利帯別の貸付残高を見てみると(表2)、20%超の貸付は前年同月比マイナス89.9%と大幅に減っています。これは、改正貸金業法の施行により、法律上の金利の上限金利が「29.2%」から貸付金額に応じて「15%~20%」に引き下げられたためと考えられます。
また、総量規制の影響を受けない銀行などのローンとの優良顧客の獲得競争が起こっているためか※、金利10%以下の貸付が、前年同月比364.4%と大幅に増加しています。収入の高い方や借入残高の少ない方など、総量規制による影響をあまり受けない方ならば、むしろ低金利で「借りやすい」と感じられる状況かもしれません。

※貸金業法の規制を受けるのは、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者であり、銀行や信用金庫は貸金業法の規制の対象外。したがって、総量規制の対象となる借入残高があっても、銀行や信用金庫などの審査を通れば、そのローンが利用できる可能性がある。

<表2:消費者向け無担保貸付(住宅向けを除く)の貸出金利帯別貸付残高・件数
(2010年11月)>
  貸付残高(百万円) 有残件数(件)*1
平均約定
金利帯
当月 前年同月 前年同月比 当月 前年同月 前年同月比
20%超 278,623 2,726,852 -89.8% 670,388 20,110,961 -96.7%
15%超~
20%以下
6,261,818 6,214,133 0.8% 117,825,122 111,406,628 5.8%
10%超~
15%以下
30,498 369,729 -91.8% 861,010 1,430,203 -39.8%
10%以下 341,687 73,569 364.4% 539,162 114,207 372.1%
不明 463,767 118,844 290.2% 2,069,856 1,380,811 49.9%

*1 「有残件数」には、クレジット業態等における、キャッシング機能付クレジットカード、ローンカードの発行件数も含まれている

※ 上記は、調査対象先における貸付種類別の平均約定金利に基づき、調査対象先の貸付種類別ごとに貸付残高および有残件数を金利帯に計上している

(日本貸金業協会 平成23年1月発行「月次統計資料」より抜粋)

借入可能額を事前チェックし、借り入れに備えておく

総量規制によって借入額が制限されるようになった結果、希望額の借り入れは以前より難しくなっているようです。しかし、逆にいえば、規制の範囲内で返済に無理のない金額を借りるのであれば、以前よりも低金利で有利な借り入れができる状況になっているとも言えます。これから借り入れが必要なのであれば、総量規制にとまどうことなくスムーズな借り入れができるように準備しておきましょう。
準備の第一は、「借りたい金額」が「無理なく返済できる金額」であるかをよく検討しておくことです。総量規制による制限額に関わらず、実際に借りられるかどうかは、各金融機関の審査によります。「無理なく返済できる金額」でなければ、上限金利が引き下げられて厳しい経営を迫られている各金融機関の審査をクリアできないでしょう。
次に、総量規制上、自分があとどれくらい借りられるのかを把握しておくことです。「無理なく返済できる金額」が総量規制の借入限度額を超えているなら、総量規制対象外の銀行などのローンの利用も選択肢に上がってきます。

イー・ローンの「カードローン診断ナビ」では、お住まいの地域、収入、借入残高などを入力すれば、総量規制の範囲内での借入可能性や、銀行や信用金庫など、総量規制の対象外の金融機関での借入可能性が診断でき、候補先となる金融機関が検索できます。「収入」欄に本人と配偶者の収入を記入すれば、借入可能性は本人と配偶者の収入を合算して判断されます。
このようなシステムも活用して自分の状況を把握しておけば、いざ資金が必要になったときに、借りられる可能性の高いローンをスムーズに選び出すことができるでしょう。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2011年01月28日