第373回

総量規制の導入で、キャッシングやカードローンの使い方はどう変わるの?

毎年夏休みには、旧友と国内外に旅行に出かけています。今までは、ちょっと資金が足りないときにはキャッシング・カードローンを利用して、余裕があるときにまとめて返済してきました。でも今年から総量規制が導入されたということで、必要な資金が借りられるかどうか心配です。キャッシング・カードローンの使い方はどう変わるのでしょうか?(大阪府 K)
返済に無理のない範囲での借り入れなら、心配することはないでしょう。

総量規制は、多重債務問題を解決するための規制

平成22年6月18日に、改正貸金業法が完全施行され、「総量規制」が導入されました。「総量規制」は、改正貸金業法の改正点の1つで、貸金業者(消費者金融業者、クレジットカード会社等)による貸付総額が年収の3分の1を超えるのを原則禁止するなどの規制があります。
 また、下表のように、1社で50万円を超える借入れをする場合などは、年収を証明する書類の提出が必要になっています。「総量規制」は多重債務問題を解決するために設けられた規制です。したがって、返済がより難しいと考えられる「借入れが多い場合」「年収が少ない場合」「借入れ希望額が大きい場合」などは、新たな借入れへのハードルが高くなっているのです。

しかし、逆にいえば、無理なく返済可能な借入れであれば規制は関係ない、ということです。相談者のように、無理なく返済できるような通常の借入れであれば、それほど心配する必要はないでしょう。

<総量規制のおもな内容>
借り入れの申し込み内容 必要な手続・書類等
1社で50万円超の借入れ 年収を証明する書類(源泉徴収票・確定申告書・給与明細等)の提出が必要
他の貸金業者からの借入れ分も合わせて、合計100万円超の借入れ
専業主婦(主夫)の借入れ 配偶者の同意を得た上で、配偶者の年収を証明する書類、借入れについての配偶者の同意書などが必要
貸金業者からの借入れ合計が年収の3分の1超 借入れ総額が年収の3分の1未満になるまで新たな借入れは制限される

*筆者作成

ただし、実際に借入れをしていなくても、クレジットカード等の借入可能額の合計が1社から50万円超、あるいは複数社を合わせて100万円超の場合には年収を証明する書類の提出を求めることが貸金業者に義務付けられています。使っていないクレジットカード等は整理しておきましょう。

お金とのつきあいかたを見直そう

とはいえ、消費者金融会社の利用者の5割の方には、年収の3分の1を超える借入れがあるそうです(日本貸金業協会2010年1月「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」)。同調査によると、貸金業法改正が成立した2006年当時に比べ、現在「手取り収入が減った」とした回答者が51.3%にものぼるとのことなので、厳しい家計を助けるために借入れを増やしているご家庭が多いのでしょう。

すでに年収の3分の1を超える借入残高があるなら、新たな借入れはできません。年収300万円の方にすでに50万円の借入残高があったとすると、希望額が100万円でも、新たな借入れは50万円までです。むやみに借入れを増やしていると、いざ必要なときに必要な金額を借りることができなくなるのです。相談者は、必要な分だけ借り入れ、きちんと返済できているようなので問題ありませんが、今後もカードローンを快適に利用できるように、いったん「お金との付き合い方」を見直してみてはいかがでしょうか。
「お金との付き合い方」といっても、難しいことではありません。ポイントを5つにまとめてみました。

  • 1、収入の範囲内で生活する
    収入の範囲内でやりくりするのが基本です。無駄な支出がないかをチェックしてみましょう。どうしても支出が収入を上回るのであれば、収入をふやす方法を考える必要がありますね。
  • 2、将来のためにお金を用意する
    旅行、結婚、教育、住宅購入、万が一の時のための保険など、将来の予定のために費用を準備できていますか? お金が必要になってから慌てるのではなく、将来のために今からお金を準備しておくことが大切です。
  • 3、借りるなら、必要な分だけ、無理なく返せる分だけ
    準備してきたお金では足りない、でも、どうしてもやりたい、やらなければならないことがあれば、借入れを考えます。ただし、借りるなら、「必要な分だけ、無理なく返せる分だけ」。言うまでもなく、借りたお金は利息をつけて返済しなければなりません。無計画な借入れのために、将来本当にお金が必要になったときに必要な金額が借りられなくなっては、元も子もありません。
  • 4、借入れを繰り返す前に、使い道や生活の見直しを
    すでに借金があるのなら、さらなる借入れが本当に必要なのかをよく考えましょう。家計のやりくりや支出内容の見直しで対処できないかを先に検討すべきです。
    なお、「ローンを返すためにキャッシング・カードローンを借りること」は絶対に避けるべきです。元の借金でさえ返済できないのに、さらに金利の高い借金が増えれば完済への道は遠のくばかりです。住宅ローンの借り換えや、無担保ローンの借り換えで、毎月の返済額や返済サイクルの見直しを検討しましょう。
  • 5、お金の知識を身につけて、有利な商品を選ぶ
    お金を借りるときにも、お金を運用して殖やすときにも、どんな金融商品があり、それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、自分のニーズにあった商品を選ぶ必要があります。
    イー・ローンのサイトには、自分の属性や条件を入力すれば適したローン商品がピックアップされる検索機能もあるので、自分にあった商品をすばやく比較検討するのに便利です。

以上のポイントは、当たり前のことばかりだと思われるかもしれません。でも、ついつい無駄遣いをしたり、自分を過信して借りすぎてしまったりと、思い当たる点がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「お金との付き合い方」をときどき振り返って、いざというときにも快適にローンが利用でき、やりたいことが実現できる生活にしておきたいものですね。
なお、貸金業者ではない銀行からの借り入れは総量規制の対象外ですし、住宅ローンなどは総量規制の貸付残高には計算されません。どんなローンが総量規制の対象となるのかも確認しておきましょう。総量規制については、下記のコラムでも、詳しく説明されていますので、参考にしてみてください。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2010年06月25日