第356回

事業資金を不動産担保ローンで借りるメリットは?

小さい会社の経営をしています。現在、事業用の資金として2,000万円程度を長期で借り入たいと考えていますが、どのような観点でローンを選んだらいいのでしょうか?(東京都・HNさん)
借り入れる資金の使途や目的、必要額、返済期間などによって、さまざまなタイプのビジネスローンがありますが、ご希望の必要資金の大きさや返済期間から考えると、不動産担保ローンが適しているでしょう。保有する不動産がある場合は検討してみてください。

大きな融資限度額、低い金利、長期返済が可能な不動産担保ローン

年末や年度末は事業者の資金需要が高まる時期です。資金繰りの計画をしっかり立てていても、顧客や取引先からの入金が遅れて一時的な資金不足になることもありますし、取引先からの要望で新しい設備を導入するなどの理由によって、資金が急に必要になることもあります。ただ、銀行や公的機関の融資では手続きや審査に長い時間がかかったり、交渉がうまく運ばなかったりするケースがあるかもしれません。

そんなときは、法人や個人事業主向けのビジネスローンを検討してみましょう。ビジネスローンにはさまざまなタイプのものがあり、何のための資金がどの程度必要なのかによって選ぶローンは変わります。

ここでは、一般的な無担保のビジネスローンと、有担保ローンの代表格である不動産担保ローンのおもな特徴を比較してみてみましょう。

  無担保ビジネスローン 不動産担保ローン
融資限度額 少額
(300万円、500万円など)
多額
(数千万円~1億など)
金利 高い 低い
最長返済期間 短期
(3年、5年など)
長期
(20年、25年、30年など)
担保 不要 必要
(自宅、賃貸マンション・アパート、土地など)

設備投資のための資金を調達するときなど、多額の資金を長期で借りる場合は、不動産担保ローンが適しています。一時的に多額な投資をし、その後に生まれる収益から少しずつ返済していくことができます。

また、不動産担保ローンは、運転資金を補充するためのつなぎ資金を急ぎで手当てするような場合にも使えます。担保がある分、無担保ローンとくらべると低い金利で借りることができますし、長期返済をすることで毎月の返済額を低く抑え、キャッシュフローを安定させることもできます。その他、資金の使途が比較的自由で融通が利くことも大きなメリットです。

不動産担保ローンを利用するときの注意点

不動産を保有しているからといって、希望するとおりの金額が必ず借りられるわけではありません。借入額には、不動産の担保評価によって上限が設けられます。また、不動産に抵当権を設定するため、登記設定費用を負担する必要があります。

ひとくちに不動産担保ローンといっても、各社、商品によって融資条件はさまざまです。金利タイプ(変動、固定)、返済期間、資金使途、融資限度額など各社の商品をじっくり検討し、自分の資金ニーズに合ったものを選ぶようにしましょう。但し、融資金額の大きさや返済期間の長さ、不動産という重要な資産を担保に入れることを考えると、借入先の会社の信用力(銀行系、事業年数が長いなど)も見ておくポイントといえます。そして何よりも、借入後の事業計画、収支計画を事前にしっかりとシミュレーションし、確実な返済計画を立てておくことが大切です。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2010年02月26日