第239回

「金融商品取引法」で私たちの生活はどう変わる?

ニュースで「金融商品取引法」という法律が施行されたと聞きましたが、どのような法律なのですか?私たちの生活にどのような影響があるのですか?
「金融商品取引法」とは、銀行や証券会社などの販売方法や広告を同一ルールで規制する投資家保護のための法律です。この法律の施行によって、私たちが株式や投資信託などのリスク商品を購入する際は、これまで以上に懇切丁寧な説明を受けることになります。

金融商品取引法とは?

2007年9月30日に完全施行された「金融商品取引法」とは、さまざまな金融商品の開示制度や、取扱業者に係る規制など金融市場の基本的な取引のルールを定めた法律です。

これまでは、株式や債券などの「有価証券」については証券取引法、金融先物取引については金融先物取引法など、金融商品ごとに縦割りで法律が定められていました。
ところが、近年、従来の枠組みに当てはまらないさまざまな金融商品と、それらを取扱う業者が登場しており、幅広い金融商品を包括的に対象とする新しい法律の枠組みが求められていました。

そこで、国民経済の健全な発展と投資者の保護を目的として、証券取引法をベースに、金融商品の販売・勧誘に関わる証券会社や証券取引所などに対する規制も盛り込まれて成立したのが金融商品取引法です。

ローンは対象となる?

また、一般的にローンなどは、金融商品取引法の対象ではありませんが、例えば、住宅ローンなど、一定期間金利を固定する商品の広告内容や金利見直しの方法など、顧客に対する説明義務が守られていないとして改善指導が出されたり、公正取引委員会から不当表示であると警告を受けたりする可能性もあります。

いずれにせよ、金融機関等が取り扱う商品は、全般的に、投資家(消費者)である顧客が不当な不利益を被ることのないよう、注意をしなければならなくなったということです。

私たちの生活への影響は

では、金融商品販売法の施行によって、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか?

従来、銀行や証券会社には、広告規制がなく、不当表示の摘発は公正取引委員会に委ねられているのみでした。
ところが、今後は、これらの金融商品等の広告について、広告の表示規制や販売時の書面交付義務など厳しい規制をかけ、違反した業者は金融庁の行政処分の対象となります。

そのため、私たちが、リスク商品を購入しようとする際には、元本割れのリスクについて、より丁寧な説明とともに、投資知識や投資経験、財産状況、投資(契約)目的等、事細かに金融機関に確認されることになります。
ある一部の金融機関では、対応が追いつかず、年齢別の販売規制を設けて。80歳以上の高齢者に対しては、原則、リスク商品の販売を自粛したところもあるようです。

一方、この法律では、規制を厳しくしただけではなく、リスク等を熟知する「プロの投資家」には初歩的な説明は不要として一般投資家に対する規制内容と区別している点もポイントの一つです。

顧客である私たちにとっては、この法律施行によって、リスクに対する説明や表示が従来に比べて充実するのは、歓迎すべき点ですが、詳細な説明を聞くことばかりに気を取られ、商品自体の内容を理解しないまま購入・契約してしまうことのないよう、説明を受けるばかりではなく、積極的に知識や情報を入手することも忘れないようにしたいものです。

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2007年10月25日