第21回

住宅ローンで叶った都心の戸建生活。築37年の家を蘇らせました

「大好きな街でどうしても戸建を買いたい!」という思いから築37年の格安中古物件を購入した新井さん夫妻。木造一軒家の空き家をリノベーションで新築同様に見事に蘇らせ、快適な戸建生活を満喫しています。

オーナーさんデータ
東京都 新井さん(仮名)ご一家
家族構成:
夫・悟さん(40歳・会社員)、妻・直美さん(37歳・会社員)
世帯年収:
400~500万円
購入した住宅:
中古戸建・3DK
購入価格:
3,250万円(物件2,070万円、リフォーム1,180万円)
自己資金:
1,450万円(物件1,270万円、リフォーム180万円)
利用ローン:
物件…三井住友トラスト・ローン&ファイナンス「ホームローン」
リフォーム…イオンプロダクトファイナンス「リフォームローン」
金利タイプ:
物件…変動金利型、リフォーム…固定金利型
金利:
物件…3.9%(2010年5月実行)、リフォーム…2.9%(2010年10月実行)
ローン借入金額:
1,800万円(物件800万円、リフォーム1,000万円)
借入期間:
物件…20年、リフォーム…15年
毎月の返済金額:
11万3,500円(物件4万8,500円、リフォーム6万5,000円)

都心へのアクセスにも優れ、住環境も良いことから人気の中野区。住み慣れたこの街で住宅を購入しようと考えた新井さん夫妻でしたが、そう簡単にはいきませんでした。
新井
夫婦共働きで毎日忙しく、なるべく通勤時間は短くしたいと思っていました。また、元々この街は私が12年、夫も7年住んでいて愛着もあり、「第2の故郷」といっても良い場所。家を購入するならば是非この街で、という思いがありました。しかし、いくつか新築戸建の物件を探してはみたものの、相場は5,000万円以上でとても手が出せず…。中古物件ならばなんとかなるかも、と探していました。
そんなときに不動産会社から紹介されたのが築37年の木造一軒家。価格は2,500万円と格安でした。
新井
競売にかけられていたのを別の不動産会社の社長さんが個人的に購入した物件で、一般の物件情報には載っていない物件でした。木造の一軒家というのは築20年以上経つと価値がないとみなされて建物の価格は実質0円、つまり土地だけの価格になるのです。「古屋付土地」と呼ばれるもので、一般的には取り壊して新しく建て直すのですが、私はこれを大規模にリノベーションして住めるのではないかと考え、乗り気になりました。
しかし、夫や両親は大反対。見た目がボロボロでしたし、もうひとつ大きな理由がありました。実は、この物件は「既存不適格建築物」と呼ばれるもの。現在の建築基準法では建ぺい率がオーバーしているため、そのまま住むには通常の住宅ローンが組めないのです。もし住宅ローンを利用するとなると、ぐんと金利が高くなってしまいます。これがネックとなり、一度購入を見合わせることにしました。
しかし半年たった頃、不動産会社からまだ売れていないという連絡が。値下げ交渉に成功し、購入に踏み切りました。
新井
ちょうど決算の時期なので、早く売りたかったようです(笑)。そこで、普通の住宅ローンが組めない分安くしてほしいと値下げ交渉をしてみました。仲介に入ってくれた不動産会社のおかげで430万円の値引きに成功。資金面はクリアできました。
しかし、物件は予想以上にボロボロで(笑)。壁は剥がれ、天井は抜け落ち、屋根は一部穴が空き、雨が入り込んでいる状態…。
それでも私の気持ちは変わりませんでしたね。私は家を「箱」のような感覚で捉えていて。立地や日当たり、窓の大きさ、風の通り具合といった「箱自体の条件」は変えられないものですが、「箱の中」はリノベーションさえすれば、いくらでもキレイになると確信があったのです。夫はあまりのボロボロ具合に購入に後ろ向きでしたが、リノベーションのカタログを見せたり、セミナーやイベントに連れて行き、「beforeとafterでこんなに生まれ変わるんだよ」と説得しました。ようやくOKをもらい、いよいよ契約・購入に踏み切ることができました。

天井は抜け落ち、壁もシミだらけ。しかし日当たりは良く、窓からも気持ちの良い風が吹くことから、購入の際には好条件と新井さんは考えた。

いかにも古臭さが漂う和室。押し入れはカビだらけでニオイも相当なものだった。

1,000万円以上かけて、大規模なリノベーションを実施。築37年の物件とは思えない家に生まれ変わりました。
新井
外観は、元の外壁にサイディング(外壁仕上げ材)を貼り付け、新築同様の見た目に。そして中は、壁や床だけでなく柱まで家中のものに限りなく手を入れました。柱にも耐震用の金具を入れて補強しました。広さを最大限活かせるように余計な壁は極力入れないようにして、階段下には収納を設けるなどデッドスペースの活用も工夫しました。

浴室のビフォーアフター。いかにも古い浴室も、白に統一して清潔感のある空間に大変身。

新井
また、元は1階にあったダイニングキッチンを2階へ移動させました。住宅密集地のため1階には光が入らず、暗くてジメッとしていて、こんな所で料理は作りたくないなと思ったので。仕事柄自宅で打ち合わせも行うので、ダイニングはそのスペースとしても活躍しています。

妻の直美さんたっての希望により、台所を2階へ。日当たりがよく過ごしやすいので、気持ちよく家事ができると大満足。

夫の悟さんがこだわったのは照明。映画を見たり、仕事をしたりとシーン別に部屋の雰囲気を変えられるのが魅力。※写真はダイニングの照明

借入金額は1,800万円。住宅ローンは、物件購入代とリフォーム代と2つのローンを利用しました。物件購入には三井住友トラスト・ローン&ファイナンス「ホームローン」を選びました。
新井
既存不適格建築物のため一般的な住宅ローンは組むことができず、不動産会社で紹介されたのが三井住友トラスト・ローン&ファイナンスでした。ノンバンク系の住宅ローンで一般的な銀行に比べて金利は高いですが、それを理由に物件の値下げ交渉もできたので、ある程度はカバーできたと思っています。
リフォームのローンはリフォーム会社の紹介でした。2つのローンを合わせて約11万円になります。以前、同じ街で住んでいた古い2Kのアパートの家賃が9万円。2万円をプラスして、キレイで広々とした、しかも自分たちの一軒家に住めているわけですから、かなり満足しています。
最後に、住宅の購入を検討している人へのメッセージをお聞きしました。
新井
こんな家に住みたい、この街に住みたいと思っていても、お金の面で諦めざるをえない方には、中古物件ならリノベーションという方法で実現できることを知ってほしいですね。雨漏りしている、カビ臭いなど悪いところばかり見えてしまいがちですが、リノベーションすれば驚くほど変わります。なかなか難しいのですが、リノベーション後をイメージすることが大事です。
また、物件を見る前に家族と相談して、自分たちで譲れる・譲れないポイントは何かをしっかり固めておくほうが、購入する際の動き出しがうまくいきます。なかには1,000万円以上もかけて直すくらいなら、少し都心から離れた場所で新築を買ったほうがいいのにと思う方もいるでしょう。しかし私達の場合は、この街に住むことはどうしても譲れないポイントでした。それを優先して他の条件を譲る結果、新築の6~7割くらいの価格で戸建てを手に入れられたので、これ以上のことはありません。
ライターからのコメント。

古い戸建てを実質土地だけの値段で手に入れ、リノベーションによって見事に蘇らせた新井さん。「既存不適格建築物」という不利な条件で銀行の一般的な住宅ローンが組めない場合でも、ノンバンクの住宅ローンを利用すれば、住宅購入の資金に役立てることができます。こうした不利な条件を逆手に取り、値下げ交渉をしたというのも非常に賢い方法です。今後、戸建住宅の購入を検討される際には、選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

文/大浦綾子、企画構成/カデナクリエイト、編集/イー・ローン