第727回

自宅を担保にした不動産担保ローンは総量規制に注意

教育資金を確保するため、不動産担保ローンの利用を検討しています。 自宅を担保にして不動産担保ローンを利用すれば、まとまった金額が借りられると思うのですが、不動産担保ローンにも総量規制の制限がありますか。(三重県 Y)
ノンバンク等の貸金業者が提供する不動産担保ローンは、年収等の3分の1までに制限される総量規制の「除外」とされる貸付ですが、居宅等は「除外」にはならず総量規制の対象となります。

そもそも総量規制とは

まず、総量規制について確認しておきましょう。 総量規制とは、2010年6月に施行された改正貸金業法で定められた、「貸金業者からの」「個人の借入限度額」が「年収等の3分の1までに制限される」という規定のことです。 多重債務問題が発端で借り過ぎ・貸し過ぎ防止のために定められました。 年収等の3分の1を超えないかどうかを確認するために、1社からの借入限度額が50万円を超える場合や、複数の貸金業者からの借入総額が100万円を超える場合には年収等収入を証明する書類の提出が必要になっています。

居宅担保の不動産担保ローンは総量規制の対象に

この総量規制には、「除外」とされる貸付があります。「除外」の貸付は総量規制の対象とならず、総量規制対象の貸付残高には含まれません。

ご利用を検討されている不動産担保ローンは、たしかに総量規制の「除外」にあたる貸付なのですが、ローン利用者や担保提供者の居宅などの生計を維持するために不可欠なものを担保とする貸し付けの場合は「除外」にはならず、総量規制の対象となります。

担保とする不動産がご自宅以外の不動産(賃貸アパートや駐車場、別荘など)であれば、総量規制の「除外」となります。

総量規制の除外
・不動産購入または不動産に改良のための貸付け(そのためのつなぎ融資を含む)
・自動車購入時の自動車担保貸付け
・高額療養費の貸付け
・有価証券担保貸付け
・不動産担保貸付け(居宅等を担保とするものは除く)
・売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付け
・手形(融通手形を除く)の割引
・金融商品取引業者が行う500万円超の貸付け
・貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介

総量規制に関わらず無理なく返済できる金額を考える

なお、総量規制は貸金業法で定められた規定なので、貸金業者(消費者金融や信販会社等)が規制の対象となり、銀行や信用金庫等による貸し付けは総量規制の対象とはなりません。 したがって、銀行等の不動産担保ローンであれば、総量規制による制限は受けません。

ただし、総量規制の制限を受ける場合も、受けない場合も、実際に貸し付けが受けられるかどうかは、金融機関の審査基準を満たせるかどうかで決まります。 また、希望金額の貸し付けが受けられても、返済が滞れば、担保物件を失う可能性もあります。 「借りられる金額」が「返せる金額」であるかを考えて、ローン利用はご検討ください。

【参考リンク】

私が書きました

大林 香世 の写真

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2017年05月29日