第670回

子供が大学院進学を希望したら、お金の準備はどうする?

大学を卒業したら就職すると思っていた息子が、突然大学院への進学を希望しだしました。応援したいけれど、資金面での準備が全く出来ていません。どのように工面したらいいでしょうか?(Uさん 51歳 主婦)
まずは大学院進学にいくらかかるのか確認してください。その上で、利用できる給付型の奨学金がないかを検討しながら、貸与型の奨学金や教育ローンも調べておきましょう。その後のローン返済を見据えて、家計の見直しもセットで考えておくと安心です。

まずは大学院進学の費用を確認

お子さんの教育資金を準備する際、国公立なのか私立なのか、理系なのか文系なのかなど、進路によって金額が大きく変わることはご存知な方も多いと思います。 そんな中で意外と見落としがちなのが、大学院への進学に関する費用です。多くの方が大学卒業後は就職するという想定で教育資金を準備していると思います。 しかし、平成27年度の学校基本調査によると、大学院への進学率は12.2%、つまり8人に1人は大学院に進学しているという状況です。特に理学系学部の進学率は43.3%、工学系学部は36.9%と、文系学部に比べて高くなっているため、お子さんが理系への進学を希望されている場合には、大学院への進学も想定して教育資金の準備を進めるとより安心です。

では、大学院進学に伴う費用はどれくらいかかるのでしょうか。

表1:大学院進学に伴う費用(修士課程、法科大学院を除く)
  国立 私立理・工・農学系
2年間合計 1,353,600円 2,052,213円
入学金 282,000円 221,645円
授業料(年額) 535,800円 814,409円
設備整備費(年額) 100,875円

「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成十六年文部科学省令第十六号)」に定める「標準額」
「平成26年度私立大学大学院入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人あたり)の調査結果」

私立大学大学院の場合、学校や専門によって金額が大きく異なります。また、実験実習費等が必要になる場合もありますので、いくつか調べてみると良いでしょう。

教育資金の調達方法

奨学金

教育資金が足りない場合にまず思い浮かぶのが奨学金でしょう。平成26年度学生生活調査によると、大学学部の51.3%、大学院修士課程の55.4%が奨学金を利用しています。 奨学金を受給している学生の多くが利用している日本学生支援機構の奨学金制度は「貸与型」ですが、大学や企業、自治体などが運営する奨学金には返済義務がない「給付型」のものもあります。 年収や成績、募集人数などの条件が厳しい場合もありますが、まずは給付型から検討しましょう。

教育ローン

国の教育ローンは民間よりも低めの金利で借りることができますが、所得制限があります。一方、民間の教育ローンには所得制限は原則ありません。 無担保のタイプと有担保のタイプがあり、有担保ローンは無担保ローンに比べて低金利で融資限度額が大きくなります。国の教育ローンに比べて資金使途が広く、スピーディに借りられるのが特徴です。 固定金利だけでなく変動金利の商品があったり、キャンペーンによる優遇があったりと様々なローン商品があります。イー・ローンのサイトで条件に合う教育ローンを比較検討してみましょう。

家計の見直しで骨太な返済計画を

給付型の奨学金を利用できれば返済は不要ですが、貸与型奨学金や教育ローンを利用する場合にはまずしっかりとした返済計画を立てることが大切です。 奨学金の返済が滞ると、場合によってはクレジットカードを作れなくなったり、ローンを組めなくなることもあり、ライフプランに大きな影響を及ぼします。 そうならないためにも、奨学金や教育ローンの利用は家計の見直しとセットで考えましょう。

家計の見直しは固定費から行うのが大原則です。そのひとつが生命保険です。 大学や大学院に進学するお子さんについて考えた場合、社会に出て経済的に自立するまでに必要な金額は保険の加入当初ほど大きくないはずです。 また、教育ローンを組んだ場合に団体信用生命保険が付いている場合も、その分保障を見直すことができます。 今必要な金額に合わせて保険を見直すことで保険料の負担を大幅に軽減できるかもしれません。

支出の見直しである程度のめどが立てば良いのですが、節約には限度があります。 根本的に家計を改善するには収入を増やすしかありません。お子さんに手がかかる時期は過ぎていると思われますので、奥さんが働くことも前向きに検討しましょう。

【参考リンク】

私が書きました

宮野 真弓 の写真

宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2016年04月19日