第634回

貸金業法完全施行から5年!借り過ぎない生活設計と多重債務脱却のポイント!

今、2つのカードローンを利用しています。手元のお金が不足したときに使っただけなので幸い借入金額はさほど大きくありません。今のところ返済が苦しくはありませんが、私も「多重債務者」ということになるのでしょうか? また、今後もカードローンを利用する機会があると思うので、留意点があれば教えて下さい。(埼玉県 28歳 男性)
一般的に、借入件数が5件以上の人を「多重債務者」と定義するため、2つのカードローンを利用している人は多重債務者と言いません。しかし、今後も気軽にローンを借りていると、いつ多重債務者にならないとも限りません。そうならないためには、借り過ぎない生活設計を心がけ習慣づけることが大切です。

「多重債務者」は5年前の8分の1に大幅減少

返済しきれないほどの借金を抱えてしまう「多重債務者」の増加が深刻な社会問題になったことから、この問題の解決を図るために従来の貸金業規制法が抜本的に改正されて “貸金業法”が作られ、2010年6月18日に完全施行されました。その後5年間で多重債務者は8分の1に激減しています。

“貸金業法”では、主に以下のことが決められました。
1、総量規制-借り過ぎ・貸し過ぎの防止
・借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借り入れができない
・借り入れの際に、「年収を証明する書類」が必要
2、上限金利の引下げ
・法律上の上限金利を29.2%から、借入金額に応じて15%~20%へ引き下げる
3、貸金業者に対する規制の強化
・法令遵守の助言・指導を行う国家資格のある者(貸金業務取扱主任者)を営業所に置く
・最低純資産額を5,000万円以上に引き上げる
4、ヤミ金融対策の強化

これらの施策によって、多重債務問題の直接的な背景と考えられた「高金利」、「過剰な貸付け」、「借り入れが容易で金利負担を認識しない返済システム」等の改善が進み、日本信用情報機構の調べでは2010年6月に111万人だった多重債務者(借入件数5件以上)は2015年5月で14万人と8分の1に激減しています。

一方で、銀行や信用金庫など貸金業者以外からの借り入れは総量規制の対象外となっており、住宅ローンや自動車ローンについても、借入残高が年収の3分の1を超えていても借り入れができます。したがって、返済しきれないほどの借金を抱えてしまわないためには、借り手側が、日頃から借り過ぎない生活設計を心がけて実践し、習慣化することが必要です。

普段の生活を見直す!お金を借りる前には計画を立てる

借り過ぎない暮らしをするためには、まず、地道に足下の家計をしっかりと管理することが大切です。収入と支出を家計簿にちゃんと記録して、毎月何にいくらかけて暮らしているのかを把握する必要があります。クレジットカードを活用すると家計管理がしにくくなるので、まずは自分で管理できる枚数に絞り込みましょう。そして、買い物のたびに、今後銀行口座から引き落とされる金額を記録して管理しましょう。クレジットカードにはキャッシング機能が付いている場合が多いので、安易にそれを利用しないこともポイントです。

現在の家計の状況を把握すると同時に、結婚や子供の教育、マイホーム取得、老後など、将来のライフイベントにかかる費用の概算を見積もることが大切です。ライフイベントの費用が明らかになれば、その実現に向けて貯蓄の意識が生まれ、ムダな支出をなくす取り組みをしやすくなります。

そして、お金を借りるときには、その前に少し立ち止まって、次のことをチェックしてみてください。

□現在の貯蓄で買えないか?お金が貯まってから買うことはできないか?
□お金を借りる目的は何か?本当に必要なものを手に入れるために借りるのか?
□複数の金融機関のローンを比較検討したか?
□金利、手数料、毎回の支払額、支払総額をチェックしたか?
□今後の家計収支から考えて、確実に返済をすることができそうか?

借り過ぎない暮らしをしていくためには、お金を借りなければならなくなったときに、できるだけ有利な条件のローンを選び、あらかじめ返済のメドをつけておくことが重要です。

複数の借金から抜け出す3つの方法

複数の借金を抱えてしまった状態から抜け出す方法は3つあります。

まず、複数の金融機関から借りている借入条件の異なるローンを新しいローンに借り換えて一本化し、返済のやり方をシンプルにする「おまとめローン」です。条件や返済日が1つになるだけでも気持ちがスッキリします。また、多くの金融機関が「おまとめローン」のサービスを提供しているため、借入条件をじっくり比較・検討すれば、借り換え前よりも返済負担が減る場合もあります。

次に、家計を徹底的に見直して、少しでも早く繰上返済をしてローンの元金を減らすことです。元金を早く減らせば利息や手数料の負担がそれだけ軽減されます。場合によっては引っ越しをして家賃を削減したり、車を手放したりするなど、痛みを伴う家計の見直しをする必要があるかもしれませんが、借金に追われる暮らしを避けるためにはそれも仕方ありません。

それでもローン返済が苦しくて返済に困るようなら、公的機関などに相談することです。弁護士会、司法書士会、日本司法支援センター(法テラス)、消費生活センター、自治体の相談窓口などに出向いて、専門家の知恵を借りることです。

豊かで穏やかに生活するためには、借金に振り回されないようにすることが重要です。そのために、まず第一に借金に頼らない生活にすること。そしてどうしても借金をする必要がある場合には、借金を自分でコントロールできるよう事前にしっかりと返済計画を立てておくことです。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2015年08月04日