第585回

目的を定めて社会復帰。専業主婦の働き方はどう考える?

子供が来年3歳になることもあり、幼稚園に入園させるか保育園にして私自身が社会復帰するか悩んでいます。自分が働けば家計はラクになるとは思うものの、保育園代も負担なので悩むところです。(Oさん33歳・女性、専業主婦)
何のためにどれくらい収入を得たいのか、一歩進んで考えてみると答えが出るかもしれません。主婦が働きに出るコストも知って検討しましょう。

何のためにどれくらいの収入を得たい?

そもそもOさんは何のために働こうとしているのでしょうか。「家計をラクにしたい」とはありますが、これをもっと具体的に考えると、答えが出ると思います。

「働きたい理由」として、次のような答えが挙がった場合で考えてみましょう。

「夫の収入が減って赤字家計に。貯蓄が底をつく前に働きたい」

「将来、中学校から私立に通うことになってもやっていけるように子どもが小学校3年生までに私の収入で1,000万円貯めておきたい」

「家計は黒字だけど教育資金が貯められない。毎月あと2万円貯蓄できるようにしたい」

「現在、教育資金やその他の貯蓄はできているが、幼稚園に通い始めると貯蓄ができなくなる」

「収入は比較的高めなのに、あればあるだけ使ってしまうため貯蓄ゼロ」

「赤字家計で貯蓄が底をつく」といった理由であれば、緊急性も高いので迷わず働くことを考えるべきでしょう。また、「中学校から私立に行くための資金として7年で1,000万円貯める」場合も、年143万円とかなりのペースで貯める必要があり、やはり働くべきです。これらの場合は、安定収入を得るためにも正社員などを目指したいものです。必然的にお子様を通わせるのは保育園となります。

働き方で悩むのが、「月2万円の貯蓄をしたい」ケース。来年、お子様が幼稚園に通い始めると月3万~4万円かかり(自治体によって一部助成あり)、習い事なども始めると支出が急に増える時期でもあり、その分も含めて考えると実収入を4万~7万円ほど増やす必要があります。月4万円であれば、在宅ワークや自宅で教室を開く、早朝バイト、幼稚園に行っている間の数時間だけパートに出る、などで何とかカバーできるかも知れません。働き方の可能性を探ってみましょう。そうした働き方で賄えない場合は、保育園に入れてフルタイムで働くことを考える必要があります。

「幼稚園に通い始めると貯蓄できなくなる」という場合は、緊急性は低く、選択の余地があります。今ある貯蓄を取り崩して働き始める時期を先送りする、幼稚園に通わせつつ収入を得る方法を探る、フルタイムで働く……などいずれかを選べます。

「収入は比較的高めなのに貯蓄ゼロ」という場合は、働きに出る前に家計の見直しから入ってみてはいかがでしょうか? お金をあるだけ使ってしまう癖は、収入が増えても改善されません。家計見直しの効果を見てから、働きに出るかどうかも検討するといいでしょう。

子どもを預けて働くコストにも注意を!

専業主婦が働きに出るには、それなりにコストがかかることも知っておく必要があります。コストを超えて収入を得ないと手元に残りません。どんな費用がかかるか把握した上で働きに出るようにしましょう。

□幼稚園代  月    万円―自治体助成 月    万円 =実質負担    万円

通う可能性のある幼稚園や自治体の助成の内容を調べましょう。

□保育料  月    万円

自治体ごとの保育料など実際にかかる月額を調べましょう。

□食費等増加分  月    万円

働きに出る妻の昼食代のほか、外食やお惣菜等が増えることも見込んで試算してみましょう。

□化粧品・洋服代  月    万円

職場によっては、化粧や洋服代などに今よりお金がかかる場合もあります。

□税金・社会保険料がかかる(かかるかどうかだけ把握を)

妻の収入が100万円(自治体による)を超えると住民税、103万円を超えると所得税がかかり、130万円(または就労週30時間)以上だと自分で社会保険に入ります。これらを引いた手取額の目安は、収入120万円で116.2万円、130万円で109.7万円、150万円で124.7万円。しかし、厚生年金に入れば、将来自分の年金額を増やすことにもなります。130万円を超えるなら150万円以上を目指した方が手取りは増えます。

□夫の増税

妻の年収が103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなり、その後141万円未満は配偶者特別控除が段階的に適用され、夫の収入が増税により減っていきます。配偶者控除の影響だけを見た場合、年収500万円の場合で7万4,300円。

□夫の家族手当停止 月    万円

妻の年収が103万円を超えると夫の職場で家族手当が止められることもあります。

働き方も家計も長期の視点で

長期的な視点で考えれば、共働きで家計の支え手が2人いた方が家計は安定します。配偶者控除の廃止も議論され、2016年10月には一定規模の会社で年収106万円(就労週20時間)以上働くと妻自身で社会保険に入ることになります。若いうちの方が正社員への可能性も高いので、コストがかかって手残りが少なくても就活をする意味はありそうです。

貯蓄がある、実家のサポートがあるなど緊急で働かなくてもいい場合は、社会復帰の時期を少し遅らせるのも一法です。また、価値観や家の方針で子どもを保育園に預けたくないのであれば、今時は在宅ワークや在宅起業なども可能な時代ですから、両立できる仕事を探してみてはいかがでしょうか?

また、子どもが幼稚園の時代から教育ローンを利用する家庭もあるそうです。利用する場合には、幼稚園の入学準備のお金が一時的に不足する分など、少額ですぐに返せる範囲にとどめたいものです。長期の教育資金の準備を行うためにも、幼稚園時代も収支バランスのとれた家計を作りたいものですね。

私が書きました

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豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2014年08月19日