第564回

消費税8%へ! 次の10%へ向けて今から始める消費税対策は?

増税前に日用品を買い貯めし、2年後に乗換えようと思っていた車を前倒しで購入しました。まだ実感はないですが、増税の影響はこれからじわじわくるのでしょうか。また、2015年10月には消費税が10%に上がる予定ですが、これに向けて、今後の暮らしをどう見直していけばいいでしょう。(Rさん33歳、会社員)
景気が上向いている今はいいですが、落ち込むようなことがあれば増税の影響は一気にきます。増税に耐えられる家計を実現しましょう。

駆込み購入や買い貯めは成功か失敗か?

2014年4月1日ついに消費税が8%にアップしました。消費税の税率アップに先駆けて、Rさん同様、増税前に日用品のストック買いや、消費税の影響を受けやすい「大きな買い物」をした人も少なくはないようです。私の周囲にも、トイレットペーパーやシャンプー、保存食品などの日用品を買い貯めしたり、時計やジュエリー、ブランドのバッグなど以前から欲しかった高価な物を購入した人もいます。さらには車を買い換えたり、新築住宅を購入、あるいはリフォーム工事を行う等、ローンなども使ってさらに大きな買い物をした人もいます。

増税を意識して買ったものとしては、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などの家電や、パソコン・スマートフォンの買い換え・購入が多かったようです。車やバイクの買い換えや新規購入をした方もいます。5割超が耐久消費財を「計画的に購入」している一方で、「前から欲しかった」ものを消費税に背中を押されて購入した人もいます。また、日用品・保存食品など、増税前のセールで「衝動買い」に走った人も少なくないようです。

増税直後ではありますが、消費税増税に伴う自分自身の買い物の仕方をチェックしてみましょう。同じような体験があればチェックをしてください。該当項目があればそれだけ増税買いの失敗を自覚できますので、次回の増税時には注意が必要です。

<増税前購入をチェック!>

□よく考えずに家電類をクレジットカードの分割払いにして毎月の家計収支が赤字に転落した

□家電類などが増税後に売れなくなって値下がりし、増税前より安くなった

□頭金もあまりない状態で新築住宅を購入したため家計が厳しくなった

□住宅は増税後に購入した方がローン控除などもあってトクだったと後で気づいた

□マイカーローンを無理して組んで車を購入したことで家計が急に厳しくなった

□買い貯めした日用品や保存食品等は賞味期限や使用期限内に使い切れそうにない

□増税後のセールや他店で、増税前の買い貯めより安く買えた

□習い事等の回数券を増税前に購えば消費税5%と聞いて購入したが使いきれない

全く該当しなければ、次回の増税の際にも冷静な対応ができるでしょう。逆にチェックが1つでもある場合は、2015年10月に消費税が10%にアップする時に同じ轍を踏まないようにしましょう。もっとも、10%への増税時には、生活費必需品についての税率は下げられる等の調整が入る見込みですので、次回は、日用品や保存食品等の買い貯めなどはそもそも起きない可能性が高いですが……。

本来的には、消費税増税の影響は価格の大きな物ほど出るため、増税前後でしっかり考えるべきは「大きな買い物」と言えるでしょう。家電や贅沢品など数万円~数十万円程度のものの場合は増税の影響を受けるので、検討する意味はあります。

しかし、住宅や車など「もっと大きな買い物」はライフプランなども鑑みた上で購入を検討する必要があります。特に住宅購入には通常、ローンの借り入れも伴うため、その後の生活への影響が長く続きます。そのため、消費税増税に背中を押されての購入は正しい行動とは言えず、借り入れたローンが無理なく返せるものかしっかり見極めてから購入すべきなのです。また、住宅購入の場合は、住宅ローン控除の拡大もあるため、あわてて買う必要はありません。消費税増税に限らず、ライフプランを見極めて時期や物件を決めた方がいいでしょう。

【参考リンク】

消費税増税時には、日用品や保存用食品の増税前の買い貯めも話題になりましたが、使い切れずに無駄になるようでは意味がありません。300円のものを買っても消費税増税3%分は9円。9円のために商品そのものを無駄にする可能性があるなら、日用品や保存用食品の買い貯めに走らない方が賢明です。増税後もセールなどで安くなることもあるでしょうし、買い貯めをするにしても確実に使う最小限の範囲にとどめましょう。

ただ、これを機に震災に備えるために日用品や保存用食品をストックするのは、防災上意味があります。ストックは1週間分程度が目安です。保存用食品やペットボトルの水などを常時一定量置く習慣をつけるのは良いことです。

前述のように10%への増税時には、生活費必需品の税率は調整される見込みが大きいので、もしも税率が下がる品目があれば、今度は買い控えが起こるかもしれません。次回は、日用品や保存食品等の買い貯めは起きないものと推測されます。

根本的に消費税増税に立ち向かうには?

そもそも日本は1,000兆円以上の借金を抱える一方で、超高齢化と少子化が猛烈な勢いで進み、年金や医療、介護、少子化対策など社会福祉の面で深刻な財源不足に直面しています。消費税増税で増えた税収は、この財源不足に充てられる予定です。

家計にとって、給与がなかなか上がらない中、消費税がアップすることは大きな問題です。しかも、社会保険料は上がり、医療・介護のサービスを受けるための負担も増える傾向にあり、現役世代であっても家計へのダメージは大きいです。

実は、1997年に消費税が3%から5%に増税した後、景気が悪化した経緯もあります。ほかの要因もありましたが、増税の影響もあったのは確かです。今回の増税でも中期的な景気悪化を心配する声もあります。景気が悪くなれば給与も減ります。ただでさえ、社会保険料のアップや消費増税で可処分所得(使えるお金)が減る傾向にあるのに、さらに給与が減る事態になったら、あなたの家計は持ちこたえられるでしょうか?

根本的に消費税増税に立ち向かうためには、大幅な家計の見直しが必要です。今後、遅くとも次の消費税が上がる2015年10月までにひと回り家計を縮小できるようにしましょう。

家計の見直しで何より重要なのは、家や車、子どもの教育、保険など、中長期で家計に影響が現れる「大きな買い物」の仕方です。これらにかかる支出は固定支出となって家計を圧迫します。できれば、身の丈よりも少し小さめに抑えていくことが大事です。消費税増税のタイミングでこうした大きなものを購入するのであれば、かなり慎重に検討する必要があります。

<住宅>退職金をアテにせずに定年までに返し終えるような無理のないローンにとどめ、その範囲で購入できるものに。住宅ローンを金利が高いもので組んでいるのであれば借り換えも検討しましょう。

<車>必需品でなければできるだけ持たずに済ませる。カーシェアリングなどを利用する。

<教育>習い事や塾、進路などを再考する。目の前の子にとって何が本当に有効なのか再検討。ネットや通信を上手に使うことで塾代を抑えることも可能です。

<保険>無駄な保障を省き、できるだけシンプルに加入しましょう。

節約の効果は大きくはないですが、変動支出の節約も大事です。これらの節約は生活習慣の変化を求められますが、ひっくり返せば、気持ちのスイッチが入れば節約に繋がるものでもあります。食費や外食費・飲み代、通信費、水道光熱費、被服費、レジャー費などが挙げられます。

<食費・外食費・飲み代>ランチ代を引き下げる、夕飯は自炊を中心にする。外食や飲み会を減らす。予算を決めてから店を探す。

<通信費>家族でプランを見直す。必要があればキャリアの見直しも。不要な有料アプリを減らす。また、携帯電話での通話はライン等無料のものを活用する。

<水道光熱費>家電はエコ家電に切り替え、エアコンに頼り過ぎない。冷蔵庫の開け閉めは短くする。電気やテレビのつけっぱなしはしない。ガスは中火を心がけ、水道も「流し水」をやめるだけでも少し違ってきます。

<被服費>リボ払いなどに頼らず、カード1回払いか現金で買うようにしましょう。

<レジャー費>計画的に貯めて行くようにしましょう。

家電類が買い換えの時期を迎えていれば、その買い換えなどは2015年10月の消費税増税前までに行っておくといいでしょう。

【参考リンク】

私が書きました

豊田 眞弓 の写真

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2014年03月27日