第324回

「もう専業主婦は借りられない?」総量規制の影響とは?

法律が変わり、消費者金融から借りられる金額が、収入によって決まると聞きました。私のように収入の無い主婦は、借りられなくなるという事でしょうか?現在、生活費がどうしても足りない時や急な出費が重なった時などに、カードローンを利用しています。使えなくなると困るのですが・・・(Y.Sさん 27歳 専業主婦)
2010年6月までに改正貸金業法の「総量規制」が導入されます。総量規制とは、消費者金融やクレジットカードのキャッシングの借入総額が、年収の1/3までに制限されるというもの。収入の無い主婦(又は主夫)の方は、「配偶者貸付け」という例外を使って、引き続き利用する事ができます。ただし、いくつかの証明書類が必要です。

総量規制の例外、「配偶者貸付け」とは?

「総量規制」が導入されると、個人に対する貸付の上限が年収の1/3に制限されますが、 銀行のローンや住宅ローン、自動車ローンなどは、この規制の対象にはなりません。

収入の無い専業主婦の方の場合、「配偶者と併せた年収の3分の1以下の貸付け」という「例外」を利用する事により、 借入が可能になります。つまり自分は収入が無くとも、配偶者の年収が300万円あれば、100万円を上限に借りる事ができます。 配偶者の年収が300万円、自分もパートやアルバイトで年収が60万円ある場合は、夫婦の合計収入である360万円の1/3、 すなわち120万円が上限になります。複数社にまたがって借りる場合は、合計金額がこの上限を超えていないかを審査され、 超過した金額は原則借りる事ができません。

必要な提出書類とは?

1社あたり50万円超の借入、複数社の利用で合計100万円超の借入は、「年収を証明する書類」の提出を求められるようになります。 さらに、配偶者貸付けにおいては、年収1/3以下という条件を満たしていても、「配偶者の同意」と「配偶者であることを証明する書類」が必要になります。


<証明書類の具体例>

年収等を証明する書類 源泉徴収票、所得証明書、確定申告書、納税通知書、給与支払明細書(直近2ヶ月分)など
配偶者の同意 配偶者が借入れをすることの同意書 、配偶者の借入れによって個人信用情報を照会されることの同意書
配偶者であることを証明する書類 戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など

※日本貸金業協会より


現在より手続きが複雑になり、必要書類も格段に増えます。 世帯としての返済能力の審査も厳しくなっていくでしょう。 専業主婦の方が「配偶者に内緒でコッソリ借りる」という事はできなくなります。

総量規制に引っかかる人はどうなる?

消費者金融やクレジットカードのキャッシング利用が、すでに年収の1/3を超えている方はどうなるでしょうか? そういった方々は、総量規制導入後、新たな借入が出来なくなります。 まだ余裕がある方でも、年収が減れば1/3の金額自体が低くなり、新規の借入を断られるケースもでてくるでしょう。 どちらも、借入残高が年収の1/3以下になるまで、返済しか受け付けてもらえなくなります。

日本貸金業協会のアンケートによると「現利用者の約半分が総量規制に引っかかる」とのこと。 つまり、このままでは、利用者の2人に1人が「ある日いきなり借りられなくなった!」という状況に陥る可能性があります。

借金をするのが難しくなる時代がすぐそこまできています。 大きすぎない借入額、無理のない返済プランが、今よりももっと重要になってくるでしょう。

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2009年07月09日