第1002回
「貸金業法に基づくおまとめローン」とは?
- 複数の借り入れがあり、返済日の管理も大変です。「おまとめローン」の利用を考えていますが、「貸金業法に基づく」と説明されているローンがありました。どんなローンなのでしょうか。(兵庫県 Hさん)
- 複数の借り入れを一本化する「おまとめローン」のうち、「貸金業法に基づく」とされているのは、「借り入れは年収の3分の1以内まで」と定める総量規制の例外とされるローンです。「年収の3分の1」を超える借り入れになっても法的には利用が可能ですが、利用するには審査をクリアすることが必要です。
複数の借り入れを一本化する「おまとめローン」
複数の借り入れがあると、返済日も複数になり、その管理も大変ですね。また、商品によって異なりますが、ローンの金利は、借入金額が大きいほど低くなる場合が多いので、複数のローンを1本のローンにまとめることで借入金額が大きくなり、有利な金利で借り入れられる可能性があります。金利が下がれば利息負担は減り、また、1本のローンなら、返済日も月に1回になり、管理も楽になりますね。
ちなみに、貸金業者の貸付金利を規制する利息制限法では、借入金額が多いほど、上限金利は低くなっています。
元本の金額 | 上限金利 |
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10万円未満 | 年20% |
10万円以上から100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
貸金業法に基づく「おまとめローン」とは
しかし、複数のローンを一本化して借入金額が大きくなると、気になるのが「総量規制」です。
「総量規制」とは、多重債務者問題を解消するために2006年の貸金業法改正で盛り込まれた規制で、「原則として貸金業者は年収の3分の1以上の貸し付けを行ってはならない」とされています。年収300万円であれば、融資限度額は100万円になります。
ただし、この総量規制には例外があり、おまとめローンに関する規定もその一つです。下記表2のような、「個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約等」であれば、年収の3分の1を超える借り入れが認められる場合があります。借換前より、借換後のほうが、有利になることがポイントですね。
借換の対象となる債務 | 貸金業者からの借入債務全般 銀行からの借入債務や、親族・知人等からの借入債務は対象としない |
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金利 | 「借換後」の金利が「借換前」の金利を上回ることがないようにする。 複数の債務をまとめる場合は、「借換後」の金利は、「借換前」の金利を各債務の元本で加重平均した金利を上回らないこととする |
返済方法 | 契約に基づく定期の返済により、段階的に残高を減らしていくことが見込まれること |
その他 | ・「1か月の負担額」について、「借換後」の負担額が「借換前」の負担額を上回らないこと ・「担保・保証に係る要件」について、「借換後」の条件が「借換前」の条件より厳しくならないこと |
※参考:
・貸金業法施行規則第10条の23第1項第1号-1、2 (個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約等)
・正貸金業法に関する内閣府令の改正の概要(平成22年6月11日 金融庁)
なお、貸金業法の対象となる「貸金業者」とは、融資業務を行っている消費者金融やクレジットカード会社(キャッシング取引)を指します(クレジットカードでのショッピング取引は別途「割賦販売法」が適用され、対象外です)。
銀行や、信用金庫、信用組合、労働金庫なども、様々な融資を行っていますが、これらは「貸金業者」ではありません。
利用の際は、「有利な借り入れ」になるかをまず試算
このように、総量規制の対象となる貸金業者のローンであっても、「貸金業法に基づくおまとめローン」であれば、借入金額が年収の3分の1を超えていても利用できる可能性があります。
しかし、借り入れを申し込めば審査を受けることになります。法的な条件はクリアしていても、その金融機関の審査基準を満たしていなければ借り入れはできません。
そこで、まずは、借入中のローンの条件・状況をまとめ、借入金額の合計がいくらになるか、どれくらいの金利なら借換前より「有利」になるのか、月々の返済はどれくらいになるのかなどを、「おまとめローンシミュレーション」を利用して試算されるとよいでしょう。ご自分にとって「有利な借り入れ」であれば、返済しやすくなり、完済できる可能性が高くなって、審査も通りやすくなるでしょう。 ご自分にとって「有利」な条件をピックアップしてから、個々のおまとめローンを検討されてはいかがでしょうか。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2022年11月15日